たいてい、神社の拝殿正面には「鈴」が取り付けられています。
鈴は神代の時代から祓いの道具、また神に祈りを捧げる道具として用いられてきました。
拝殿に鈴が吊されているのは、参拝者自らが神を前に鈴の音で祓い清めるためのものです。その鈴を鳴らす綱が鈴緒(すずお)です。
神聖なる鈴を鳴らす綱であるため、古来、神聖な植物とされている麻で作られてきました。
鈴を鳴らし、自らの魂を振るい起こす鈴緒は、まさに神仏にその魂をつなぐものともいえます。
一方、寺社仏閣の堂前に吊される金属製の音具を「鰐口(わにぐち)」と呼びます。
それは下側の口の部分が大きく割れている姿が鰐の口に似ているからです。
現在のように寺社仏閣の正面軒先に吊されるようになったのは鎌倉以降とされています。その鰐口を打ち鳴らすための綱が鰐口紐(鐘緒)です。
堂前に吊した鰐口を打ち鳴らし、御仏に参拝にきたことを知らせるために用いるものです。
昨今、機械による大量生産の綱が多く出回るようになりましたが、神様、仏様と参拝される方をつなぐ綱は、熟練した手仕事の技でしか得ることのできない、丈夫でしなやかで、何より人の手になじみやすいものを。
厳選された麻を用いて、一本一本縄の本質をとらえた伝統技法の麻縄から生まれる創業120年超の京都・山川の鈴緒や鰐口紐です。
・参考文献
「日本の建国と阿波忌部」林博章著
「明治19年創業 神社仏閣用麻製品調整 株式会社山川パンフレット」など