日本の麻文化を守る。大鼓、小鼓、締め太鼓の麻製「調べ緒」も取扱い

昨年、第10回日本麻フェスティバルin吉野川~麻植と麁服~にて鼓調べ緒(しらべお)紐の復元の展示があったことは、こちらに書きました。

調べ緒(調べ)とは、能楽や歌舞伎はじめ、全国各地の祭礼には、小鼓、大鼓、締め太鼓が欠かせませんが、その表革と裏革を締め合わせる麻紐のことです。(その締め具合によって音程を変える調律の役割も担います)

調べ緒の製作には30以上の工程がある上、演奏家の細かいニーズにも対応しなければなりません。
調べ緒を製作する職人の高齢化、減少により、神社仏閣用の麻製品を手がける京都・山川へ昨春、相談が持ちかけられ、山川で調べ緒の製作もできるようになりました。

小鼓の調べ緒は、少し緩みをもたせて掛けます。演奏する際は左手で調べ緒を握り、張力を変化させることで音程を変え、右手の打ち込みの強弱と組み合わせて多様な音色を打ち分けています。

一方、大鼓と締め太鼓の調べ緒は、非常に固く締め上げるので、そうした使用に耐えるように綯う(※)ときも固めに仕上げます。※繊維をより合わせることを綯(な)うといいます。
調べ緒は音色を左右する楽器の重要な一部であり、その扱いも演奏のテクニックの1つであるといえます。

同フェスティバルで鼓調べ緒紐の復元の展示に関わった能楽師・大倉正之助さん(囃子方大倉流大鼓、重要無形文化財総合指定保持者、いわゆる人間国宝)いわく、「現在では(調べ緒)はナイロン製に変わりつつあり、私たちのような伝統従事者、重要無形文化財の人間ですらナイロン製を使っているという現状」とのこと。

国産の精麻で製作できます。また各種鼓とともにお求め可能になっております。お問合せください。

 

 

・参考文献

「日本の芸能を支える技V調べ緒」パンフレット(東京文化財研究所)

鼓調べ緒紐の復元(第10回 日本麻フェスティバルin吉野川)にならって

10月28~29日に開催された第10回 日本麻フェスティバルin吉野川~麻植と麁服~にて、能楽師・大倉正之助さん(囃子方大倉流大鼓、重要無形文化財総合指定保持者、いわゆる人間国宝)により鼓調べ緒(しらべお※)紐の復元の展示がありました。

※調べ緒=能楽や歌舞伎はじめ、全国各地の祭礼には、小鼓、大鼓、締め太鼓が欠かせませんが、その表革と裏革を締め合わせる麻紐が「調べ緒」です。その締め具合によって音程を変える調律の役割も担います。

ご覧になった方、いらっしゃいますか?

わかりやすく、無染色、現代化学染色、茜染色の調べ緒が並べられ、茜染めの調べ緒の大鼓も展示。

説明には麻は大森由久(栃木県)、調べ緒は宮本則之(滋賀県)、茜染色は杉本一郎(大阪府)と書かれていました。

日本麻フェスティバルin吉野川初日、主催者・大森由久さん、吉野川市長・原井敬さんのあいさつに次いで、大倉正之助さんがこの大鼓の演奏をされました。演奏に先立ち、「現在では(調べ緒)はナイロン製に変わりつつあり、私たちのような伝統従事者、重要無形文化財の人間ですらナイロン製を使っているという現状」とお言葉がありました。

 

しめ縄などと同じことが起こっているのですね。

そんな中、国産麻、茜染めの調べ緒を復元、演奏されたのはたいへん有意義なことと思います。

私事、2015年だったと思いますが、神社仏閣用の麻製品の染色は99%が化学染料と聞き、えっ?と思ったことは忘れません。

なんとか神様にお捧げするものは自然由来の藍染め、草木染めのものをと思いました。京都・祇園祭の山鉾に藍染めの精麻がつかわれていることを知り、2016年に藍染め版のしめ縄【神居 和かざり】、2020年に陰陽五行の五色がようやく草木染めでできるようになりました。

五色といえばすでに製品化されていた神楽鈴・国産精麻五色緒ということで、草木染め版が誕生したわけです。

そして、その翌年に前天冠の五色房も、草木染めの国産精麻五色房でできました。

日本の麻の伝統技術を守ると同時に、引きつづき神社仏閣用の麻の神仏具は、できるだけ藍染め、草木染めになるように尽力したいと思っています。