三ツ木八幡神社神麻しめ縄奉納レポート

天皇即位にともない2019年11月14~15日に予定されている践祚大嘗祭では、新穀とともに阿波の麻織物・麁服(あらたえ)と三河の絹織物・繪服(にぎたえ)が神座にまつられ、五穀豊穣を祈ります。

3月31日、徳島県木屋平の三ツ木八幡神社にてNPO法人神麻注連縄奉納有志の会(安間信裕代表)による神麻しめ縄奉納が行われました。

阿波忌部氏の直系、御殿人(みあらかんど)である三木家において麁服の調進準備があるのでこの日が選ばれた由。

安間さんによると、平成の大嘗祭に際し抜麻を安置して糸績みの初紡ぎ式までをこちらの神社で行ったそう。

今回奉納したのは神麻しめ縄4本と鈴緒1本。しめ縄は本殿1本、拝殿に3本です。

地元徳島県はじめ全国各地から集まった約15名で、忌部神社宮司や三木家当主、三木信夫さん、また氏子の皆さんのご協力を得て奉納させていただきました。

紙垂を取り付け中
奉納前にしめ縄に紙垂を取り付け中

私自身は安間さんの主催する神麻しめ縄奉納神事に参加するのは今回で3回目。(NPO法人になってから剣山本宮宝蔵石神社、忌部神社、富岡八幡宮につづきこれで4回目の奉納)

私の知る限りこれまでの奉納の時とくらべずいぶん人数が少なく、最初1人当たりのすることが多いと聞いていましたがそんなことはまったく感じず、分担して各自手際よく作業奉仕できたと思います。

奉納報告祭後、三木家住宅へ移動し直会。食事を皆でいっしょにいただきました。私的にはお座敷に上がらせていただくのはこの時以来2回目で前きたときはとても緊張していましたが今回はリラックスしてのぞめました。

三木家住宅で直会
築400年の三木家住宅で直会

三木家住宅、神社西側の貢公園のしだれ桜も見頃。例年、桜の時期に三木家住宅前で催事をしているのは知っていて、ちょっと早いかと思っていましたが、到着するなり“桜の歓迎”を受け心もさらに軽やかになりました。うれしい誤算!でした。

ちなみに前回一緒に来た方は毎年三木家の桜を見に来ています。見ないと春を過ごした気がしないと聞いていましたが、その気持ちがわかった気がします。この地は「空地(そらち)」と呼ばれ聖地ですから。

三木家住宅前の斎畑。
三木家住宅前の斎畑。

 

三ツ木八幡神社のしだれ桜
三ツ木小学校・中学校跡を整備した貢公園のしだれ桜。後方に三ツ木八幡神社

直会の際、代表の安間さんが「大嘗祭が無事執り行われますよう、また麁服が無事調進されますように」とあいさつされていました。

これが今回関わられた人たちの共通の願いと思いますので、そのことをお祈りします。

 

もっと詳しい報告を「精麻の注連縄を探して」のコーナーにてさせていただいてます。

京都の木工職人と麻縄職人による国産精麻がついた祓串(大麻)にて祓う術

神主が祓いに用いる道具は「大麻(おおぬさ)」と呼ばれ、神事には必ず用いられます。

「大麻」は「祓(はらえ)の幣(ぬさ)」であり、今日一般的には榊の枝に麻苧(麻の茎の繊維を平らに熨したもの)と紙垂を添えて取り付け(麻苧のみの場合もある)、祭事の際は修祓行事に使用し、あるいは檜の角棒(幣串・幣棒などと称する角棒)や丸棒を串として、これに麻苧と紙垂を添えて取り付けて(麻苧のみの場合もある)筒の中に納め置いて、日常の神拝などの際に、筒から取り出して修祓に使用するものである。『家庭の祭祀事典』西牟田崇生著(国書刊行会)P108より

大麻(たいま)は神道では罪や穢れを祓う神聖な植物とされてきました。

なぜ縄文~弥生期に使用されたか

「ものを縛る」「束ねる」「吊す」「土器に縄文をつける」「釣り糸にする」「弓の弦にする」「袋の口をしめるヒモにする」「鏡や首飾り、腰飾りなどの孔に通すヒモにする」「縄帯」「衣服の腰ヒモ」「縫い糸」「編み物の材料」「舟のもやい綱」「海人の命綱」「はえ縄」「墨縄」「結縄」など、大麻は縄文~弥生期に頻繁に使用されました。なぜか?

1.繊維が強靱であること。

2.種蒔きから約90日の短期間で人間の背以上に高くまっすぐ育ち、栽培しやすいこと。

3.大麻には神々と交信し、自然のメッセージを受けるシャーマンに必要な一定の覚醒作用があると思われていること、など。大麻そのものがもつ縄文時代以来の日本人の体験による不可思議な神聖さとその呪術性ゆえです。

私たちが知るところでは、しめ縄、御札、御幣、鈴緒、狩衣、祭りの山車の引き綱、上棟式などで使用されてきた大麻。現在、神社で大麻が最重要視されているのは「神が宿る神聖な繊維」とみなされているからです。

国産大麻(精麻)の祓串

大麻(おおぬさ)は、白木の棒で作ったものは祓串(はらえぐし)とも言います。

この祓串は、紙垂と精麻がついたもの、紙垂だけのもの、精麻だけのものがありますが、さぬきいんべでは国産極上精麻だけがついた祓串をご用意。

白木の棒と置き台に木曽桧(樹齢150年以上)の柾目材を用いた京都の木工職人と麻縄職人からなる伝統工芸の粋を集めた神具です。※高さ約30センチと約75センチのものがございます。

写真は高さ約30センチのもの。

国産大麻(精麻)・祓串
国産大麻(精麻)・祓串【たまきよら】

 

こちらは紙垂付き。
こちらは紙垂付き。

随所に示された職人の心と技、国産精麻の黄金色、木曽桧の木目の細かさ、美しさ、香りなども併せてご観賞いただければ幸いです。罪穢れや病気、災厄などを祓い清める祓具として、朝夕の神拝など、自己祓いにお使いください。(2022年、東京・戸越八幡神社様より外祭用ということで高さ約60センチの祓串をご注文、納品させていただきました)

 

阿波国一宮・大麻比古神社の祓串

徳島県の阿波国一宮・大麻比古神社には上の祓串、高さ約75センチ(紙垂付き)が2017年に日本麻振興会により大麻比古神社に奉納されました。(奉納時にそこにおり、拝させていただきました)

なお、同神社では拝殿に向かって右側に自己祓い用の祓串があります。(神社によってあるところ、ないところあり)

大麻比古神社の祓串
大麻比古神社の紙垂と精麻からなる祓串

説明書きがあって、「自己祓いの作法」とあります。

1.両手で祓串を持ちます。

2.唱詞を奏上しながら自身の肩の辺りを左・右・左の順序で祓います。

3.祓串を戻し、お賽銭を納めます。

4.二礼二拍手一礼の作法で拝礼します。

唱詞「祓(はら)へ給(たま)へ 清(きよ)め給(たま)へ 守(まも)り給(たま)へ 幸(さきは)へ給(たま)へ」

文字通り、祓い清めてお参りするんですね。

 

 

参考文献:

「日本の建国と阿波忌部」林博章著

「大麻という農作物」大麻博物館著

「檜(ひのき)」有岡利幸著(法政大学出版局)

「家庭の祭祀事典」西牟田崇生著(国書刊行会)