6月30日は夏越の大祓。
夏越の大祓とは、日々の生活の中で枯れてきた気を元に戻し、知らぬ間に犯してしまった過ちや罪を半年に一度、「人形(ひとがた)」に移して祓い清める長い歴史のある神事です。(大祓は年2回、6月と12月の晦日(末日)に行う。元は宮中行事でした)
夏越の大祓では、茅の輪を3度くぐり無病息災・延命長寿とともに心身ともに健やかな日々(健幸)を過ごせるよう祈願します。
※神社等によって日時が異なる場合があります。ちなみに氏神神社は、夏越祭(なごせ)といい、毎年旧暦6月16日(2024年は7月21日)です。
「罪・穢れを祓う」について奈良・春日神社の元宮司、葉室頼昭さんによる、こちらがわかりやすいでしょうか。
罪・穢れを祓うというと、外国の対立の考えからすれば除去するということになりますが、先にも述べましたように、日本人は元来対立して争うという考えは持っておりませんので、除去ではなく罪・穢れを消すというのが、祓いの意味です。
しかし、ものを消すというのも、ある意味では対立の考えですから、祓いの原点にあるのは、罪・穢れを再びわれわれを生かす姿に変える、リサイクルするということなのです。(『神道と“うつくしび”』葉室頼昭著(春秋社))
「茅の輪」の起源は、京都・八坂神社に下記の伝承があります。
牛頭天王は、長旅に出た途中で日が暮れてしまった。一夜の宿を所望した。大金持ちの巨旦(こたん)には断られるが、貧しい蘇民(そみん)には快諾された。
後年、牛頭天王が眷属を連れて巨旦一族を疫病で滅ぼそうとしたとき、蘇民が「巨旦の家には私の娘がいるので、助けて欲しい」と願いでる。牛頭天王は、「蘇民将来(そみんしょうらい)の子孫と記した札と茅の輪を腰に下げておけば疫病から免れる」と告げて去っていった。そのため蘇民の娘は難を免れたという。
この伝承に基づき、祇園社などで配られるお札には「蘇民将来子孫之門」と書かれ、疫病退散のご利益があるとされている。神事として行われる茅の輪くぐり(夏越の祓えにて、茅で作った輪をくぐることで身のケガレを祓い清めて、無病息災を願う)も、この故事に由来する。(『決定版 知れば知るほど面白い!神道の本』三橋健著(西東社)P.185より引用、一部編集)
茅(ちがや)はイネ科の植物で、利尿消炎作用をもつ薬草です。先人の知恵ではないでしょうか。
午頭天皇=須佐之男命(すさのおのみこと)をご祭神とする八坂神社では、7月に祇園祭がおこなわれます。祇園祭は、疫病退散を願い、その原因と考えられていた恨みをもって死んだ人を祀る祇園御霊会(869年)が起源で、しだいに夏越の大祓と習合し、都市型の夏祭りとして定着しました。
水無月の 夏越しの祓ひ する人は 千歳のいのち 延ぶといふなり
京都など氷室の節句でいただく和菓子の「水無月」もその小豆の赤い色や三角の形に魔よけの意味があるそうです。