海外では大麻の再評価が進んでいます。
このような状況の中で、ついに日本も「大麻取締法」が、70年以上の時を経て、大幅に改正されようとしています。
厚生労働省は2021年1月から6月にかけて「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を8回にわたって開催しました。
検討会での意見はすでに報告書として取りまとめられ、関係審議会の議論を経て、早ければ2022年春に法改正される見込みとなっていました。
どのような変化があるのかは主に2つです。
1.カンナビノイド医薬品の解禁
大麻に含まれる成分、カンナビノイドから製造される医薬品はG7諸国において日本のみ承認されていませんでした。
しかし、今回の見直しによって難治性てんかん薬「エピディオレックス」をはじめとするカンナビノイド医薬品の「試用」や「製造」及び「治験」の実施までも可能となりそうとのこと。
日本においても、製薬会社や大学等の研究機関がカンナビノイド医薬品の研究や開発に着手しやすくなるということだそうです。こちらは詳しくないのでこれぐらいにとどめます。
2.「日本の麻文化を守る」と明言
大麻は日本人にとって身近な農作物として、縄文時代からほんの70年前まで、衣食住や神事を支えてきました。
そもそも大麻取締法はGHQ占領下において、当時の大麻農家を守るための折衷案として成立したという経緯があります。
1954年には約3万7000件を数えた大麻農家は、化学繊維の普及と生活習慣の変化によって、2019年末には35名と激減しています。
しかし、神社における神事や神社の鈴緒、お寺の鰐口紐(鐘緒)、横綱の綱(ものとしての”横綱”)、麻織物、凧糸、弓弦、和紙、松明(たいまつ)、花火の助燃剤、茅葺屋根材、お盆のオガラなど、日本の文化に欠かせない素材として大麻は生き残っています。
そのような背景があるにもかかわらず、厚生労働省はこれまで、薬用型の大麻と繊維型の大麻をひとくくりにして啓蒙を行い、新規就農のハードルを高め、既存の農家には不合理とも思える管理体制を求めてきました。
しかし、検討会の中で「日本の麻文化を守るために」と題した会議が開催されました。
「栽培に対する合理的ではない通知の見直しや指導の弾力化を図ることが適当である。また、現在、都道府県ごとに策定している大麻取扱者の免許基準についても、全国で統一的な見解を共有することが適当である」
と明言。
さぬきいんべは、日本(四国)の麻文化を守りたいと思い、はじめましたのでこのことについては大歓迎です。
これに付随して、厚生労働省がホームページに掲載していた記事で、繊維型の日本の大麻栽培に警鐘を鳴らしていた「大麻栽培でまちおこし!?」の部分が2021年6月に削除され、厚生労働省は合理的な指導を超えた規制を緩和するよう、同年9月に都道府県へ通達を出しました。
これにより、新規就農に門戸が開かれることとなり、既存の大麻農家にとって大きな負担だった畑への監視カメラやフェンスの設置、見回りなど管理の負荷は軽減されていくではないでしょうか。(同年10月より厚労省と都道府県、栽培農家の3者協議がなされている模様)
さらには、休耕地活用や地方創生といった動きにつながる可能性が期待されます。
大麻取締法は、いつ改正されるか、実際どのような内容になるか。要注目です。
なお、2022年4月から厚労省審議会は大麻規制検討小委員会を設置し、大麻取締法の改正に向けた具体的な議論をおこなっています。自民党所属の国会議員らが勉強会を発足するなど、規制緩和に向けた動きが進んでいます。
・参考文献
ちいろば企画【ちいろば旅倶楽部NEWS】2021年8月1日号
「麻酔い」はない 厚労省が『大麻栽培でまちおこし!?』ホームページを削除 栽培農家の反発受けて(東京新聞2021年6月17日)
大麻栽培農家への過度な規制を緩和へ 厚労省が都道府県に9月通達(東京新聞2021年8月26日)
産業用大麻の栽培で過度な管理要件の緩和を 厚労省が都道府県に通知(東京新聞2021年9月11日)
農業経営者2022年6月号(株式会社農業技術通信社)