日常に根づいている神祀る日本人のこころ(家庭内に鎮座する神社、神棚)

皇祖・天照大御神(あまてらすおおみかみ)をお祀りし、日本国民の総氏神として崇敬される伊勢の神宮。

神宮では、年間に1500回に及ぶ恒例祭典が斎行されています。

日本の津々浦々に祀られる神社は、その土地の人々によってそれぞれ手厚く祀られてきました。

毎年、ここで祭りが行われ、豊作を祈願し、感謝してきました。長い間、稲の豊作が社会発展の基礎であったからです。

日本人と米との関係は、日本書紀では天孫降臨に際して天照大神(あまてらすおおみかみ)が仰せられた「三大神勅(しんちょく)」の1つ、「斎庭(ゆにわ)の穂(いなほ)の神勅」に象徴されています。「わたしが高天原で食している斎庭の稲穂をわが御子(みこ)に与えよう」との内容で、天照大神から皇孫に授けられた稲穂が日本人の米食の契機となったことが示されています。

民俗芸能の神楽、獅子舞なども祭りのなかで継承されてきました。神社は、その意味で日本人の祈りの原点です。

そして、神祀る日本人のこころは、日常に根付いています。

そのうちの1つが家庭内に鎮座する小さな神社といえる神棚です。

伊勢神宮のお札である神宮大麻を納めるための棚がその起源とされ、室町時代以降、庶民の間で室内に神棚を設けることが定着しました。

神棚には、神社をかたどった宮形を置き、正面中央に神鏡、左右に榊をかざる榊立て、神灯を照らす灯明を置いて前面上方にしめ縄を張ります。しめ縄は聖と俗をわける象徴で、一般に太い方が正面右にくるようにします。そして、宮形の内部にお札を祀ります。

会社の神棚の事例(写真は、牛蒡型しめ縄)
会社の神棚の事例(写真は、牛蒡型しめ縄)

 

 

・参考文献

「皇室」令和6年秋104号(公益財団法人 日本文化興隆財団)

「図解 神道としきたり事典」茂木貞純著(PHP研究所)

年末年始を迎えるにあたり心得ておきたいこと(2024-2025年)

12月を迎え、2024年もあとわずかになりました。

年末年始を迎えるにあたって、3つお伝えさせていただきます。

まず1つ目。大根型、牛蒡型のしめ縄、各種和かざりをお求めの方はwebショップよりご注文ください。(お電話、メール、FAXでのご注文も承ります)

在庫のあるものはもちろん、年内お届けが可能です。

※今年もご希望の方に年内にきちんと届くようにと、国産大麻(精麻)しめ縄年内お届け超早期ご予約ページを開設しておりましたが、どうしてもという方に向け現在ご予約を継続しております。

 

2つ目。「しめ縄は毎年変えた方がいいですか?」とお問合せいただくこともあります。

答えは否。ご予算などに応じて新しくしたらと思います。スーパーで売られているような市販のしめ縄、しめ飾りなら躊躇ないとは思いますが、国産精麻、あるいは稲わら製の職人が手仕事でつくったしめ縄は大切に使いたくなる人も多いのではないでしょうか。

氏子からしめ縄や鈴緒が奉納されている神社では毎年変えてないところも多いです〔それでもすす払い(家庭でいう大掃除)をし紙垂を新しくしたりして新年を迎えているところが多数ですが、神職がしめ縄を手づくりし新しくする様子を伝えるニュースや新聞記事を近年、年末に頻繁に見るようになってきております〕。

※本年もそういった方のために、紙垂の取扱いをしております。もし、自分でしめ縄をつくることができるなら、それが一番と思います。

 

3つ目はその根本にある理由です。

日本の神道は黄泉(よみ)の国から帰った伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の禊ぎにみられるように「きれいになる」、また「再生」を尊ぶという、言わば「新生」する精神があります。これに付随し、黄泉の国から帰ることを意味するよみがえり(黄泉がえり)という言葉もあります。

また常若(とこわか)といういつも若々しいさまをいう言葉もあります。前述のすす払いや大掃除、お神札、しめ縄などを1年毎に納めて新しくする背後にはこういう意味合いがあります。

なお、使い終わったものは、社寺の境内等で家庭の門松やしめ飾りなどを一緒にはやす(燃やす)正月の伝統行事、どんど焼き(左義長、とうどうさん、地域によって呼び名がちがう)へ。そこで1年の無病息災を祈りましょう。

年越しの大祓も忘れずに。日々の生活の中で気づかないうちに生み出した目に見えない罪穢れをすべて祓い清めて新しい年を迎えます。

新年は1年で一番神様を感じる時ではないでしょうか。その新年を迎える前と、迎えた後。伝統行事は1年を健やかに過ごす先人の知恵です。

 

大年神(おおとしのかみ)は、民間信仰から歳徳神(正月に家に迎えまつる神)と考えられています。

家のしめ縄を新しく掛け替えたり、年神様の依り代(神様の憑依物)としての門松を作ったり、穀物神である年神様に穀物の代表として鏡餅などを供えたりして、新年を迎えます。

年々、神様をお祀りすることの重要さが増しているように思います。

皆様がいい年末年始をお迎えいただけますようにお祈り申し上げます。

第3回大麻の麻縄活用コンテスト【優秀賞】【みろく賞】【特別賞】の結果発表

2年ぶりの開催、第3回大麻の麻縄活用コンテストにご応募いただいた皆さま誠にありがとうございます。

さて結果の発表です。

【優秀賞】ひかりのたね mie様、「精麻の万能ととのえ縄」

(評)太さ12ミリ(最太部)×長さ約1.55メートルの2本撚り、極上国産精麻をつかった自作の麻縄です。

単なる縄のようで、端末は蝶々結びを施すなどアクセントになっております。

「精麻の万能ととのえ縄」
「精麻の万能ととのえ縄」
端末に蝶々結び
端末に蝶々結び

mie様は、装飾結びも好きでいろいろ精麻で作っておりましたが飾りとしてだけでなく、ご自身がエネルギーに敏感なため、身につけたり持ち歩けたり、いつでも活用できるものが欲しくなり、この縄を作製したそうです。

例えば、首からかけてぼんのくぼのあたりを左右にこすったり背中や腰までをまんべんなく摩ることで瞬時に整うのを体感したり、腰に巻くことで体軸がスッと整い軸が定まったり、また、大ぶりのアクセサリーとして普段着ている洋服にもピッタリ合うので、おしゃれとしても楽しめたり、感情が乱れたときなどに頭に巻くと不思議とすーっと降ろしてもらえるような感覚があり氣持ちが整ったりしているとのこと。

洋服に合わせた活用例の1つ
洋服に合わせた活用例の1つ

この精麻の縄が1本あることで、精麻のもつ美しさ、祓いの強さ、整える力、安心感を瞬時に感じ、精麻の効力を身近に体感できるので、日々の整えにとても重宝していますとmie様。

日本の美は“引き算の美”だと思います。シンプルな自作の麻縄をさまざまな用途に、生活に密着した形で活用されているのはすばらしいと思いました。

なお、mie様は、日本の伝統や文化、精神性を取り戻していけたらと、精麻と真菰を広げていく活動を3年ほど前からされており、オーダーを請けて麻縄をお作りもさせていただいているそうです。

 

【みろく賞】あおのろか様、「私の相生アンブレラマーカー」

(評)ご自分の傘に合わせてつくったアンブレラマーカー(相生結び)です。

傘の取り違えがないように、自分の傘だとわかるように目印として使います。このマーカーがつくことで「聖なる傘」になると思いましたが、気にしながら使うことで愛情が湧いたりするのが楽しいんですとご本人。

「私の相生アンブレラマーカー」
「私の相生アンブレラマーカー」

今回最多のご応募点数だったのがあおのろか様でした。チョーカー、ピアス、ネックレス、バッグチャーム、しおり、カーテンのタッセルも製作され、このアンブレラマーカーは子ども用も含めた数種あったうちの1つです。

コンテスト開催の期間中、「毎日何かないかなぁと、あれこれと考えているのはとても楽しい時間です」とおっしゃっていました。作りつづけられたら必ず「幸せ」が周囲に伝播すると思いました(わたしの幸せはあなたの幸せのような感じでです)。

 

【特別賞】おおつかまみ様、「カラフル精麻のコロコロネックレスとブレスレット」

(評)今年7月に精麻のことを知ったという、おおつかまみ様。作った時にどうしても出てしまう切れ端。ほんの少しの切れ端にも精麻のパワーが宿っているのにもったいない。捨てられない。藍染め、茜染め、桑の葉染め、渋柿染め、紫根染め、苺染め、、、カラフルに染められた精麻も捨てられない。

それなら、切れ端の精麻を細かく裂いて、丸めて、コロコロしたものを麻紐でつないで、ということで、ネックレスとブレスレットを作ったのがこちらだそうです。

カラフル精麻のコロコロネックレス
カラフル精麻のコロコロネックレス
同・コロコロブレスレット
同・コロコロブレスレット

麻紐にはアクセントをつけるため、叶結びをしてみたり、ネックレスは後ろから見ても前に垂らしても可愛く見えるようにカラーのまとめ結びを付けてみたり、縄をほどいてフサフサにしたとのこと。

「もったいない」は日本の心だと思います。端切れのカラフルなコロコロの楽しさが伝わるだけでなくきれいで、紐部分に叶結びやまとめ結びなどを入れたり細かいところも配慮され、心がこもっていると思いました。

 

【特別賞】宙舞えみり様、「シアワセにひたる和かんざし」

(評)日本の伝統的な髪飾りである、かんざしに精麻(きなり、苺染め)の叶結び、水晶(素粒水ビーズ)と天然真珠とレース糸かぎ針編みなど思いつくまま、手作り感満載になっています。

「シアワセにひたる和かんざし」
「シアワセにひたる和かんざし」

かんざしが自由な発想で独創的、現代風に仕上がっていると思います。写真を撮るのに娘さんがわざわざ浴衣を羽織ってくれたとのことで、日本人らしさが自然と伝承されているところもすばらしいと思いました。

この娘さんが町内の盆踊りの太鼓打ちをされたことから、孫が民謡を唄うようになり、三味線を習い始めたとのこと。日本の伝統がこのように継承されていくのもうれしいなあと思っているそうです。

 

麻縄活用コンテストに多数のご応募をいただき、誠にありがとうございます。

お1人で複数のご応募をいただいた方はもちろん、どれも思いのこもったものが集まりました。今回も皆さまの作品を展示して見ていただけるようにしたいと思いました(次回は審査にあたり幅広いご意見をちょうだいしようと一般の皆さまから投票を加味することを考え中です)。
麻縄(麻紐)のもつ可能性は無限大。日本古来の大切な文化である麻縄、精麻に触れていく人がますます増えていきますように。

本コンテスト開催にあたりご協力いただいた方々、ご応募いただきました皆さまに感謝申し上げます。

日本一質の良い精麻、群馬県東吾妻町(旧吾妻町岩島)の「岩島麻」について

群馬県では東吾妻町(旧吾妻町岩島)を中心とした榛名山の北麓一帯や群馬県西部の甘楽郡などで麻が作られていました。

現在は岩島麻保存会が麻の生産を行っており、「岩島麻」として出荷されています。同保存会がおこなう「岩島の麻栽培と精麻生産」は、1992(平成4)年に群馬県選定保存技術となりました。

11月17日に愛媛県伊予市にて開催された日本「麻」文化フォーラムにゲストの1人としてこられ現在、三重県で大麻栽培者免許を取得し栽培している岡沼隆志さん(ヘンプイノベーション株式会社 取締役CTO)は、2000年に奈良県で免許を取得し、製作した精麻を3年間、同県の月ヶ瀬奈良晒し保存会に納品していたそうです。

岡沼さんが精麻加工を教わったのは岩島で、専用の台に載せた麻の皮からオカキ(麻掻き)と呼ばれる用具でカスを取り除く伝統工法(手びき)です。(岡沼さん、オカキとそれをつかってできた精麻を持ってきて見せてくれました)

毎年5月と10月の14日に伊勢神宮でおこなわれる「神御衣祭(かんみそさい)」で、天照大御神に捧げられる神御衣(神様がお召しになる衣)の1種、「荒妙(あらたえ)」の麻糸は、現在は奈良県月ヶ瀬で産するものが用いられており、岩島麻が使用されています。

また、平成天皇の大嘗祭に調進した麁服は、岩島産の種から栽培したものと徳島県木屋平の阿波忌部直系、三木家を2015年に訪れた際、第28代当主・三木信夫さんがおっしゃっていました。(栃木県産の品種、トチギシロも栽培したが繊維が硬かったそう)

記念誌「令和の大嘗祭 麁服」(発行:特定非営利法人あらたえ、阿波忌部麁服調進協議会)に掲載の写真によれば、今上(令和)天皇の大嘗祭のときに用いられた精麻は群馬県でしか見られないオカキをつかって製作しているため、平成天皇のときと同じ岩島産の種からと思われます。

このように、岩島麻は日本一質の良い麻(精麻)と言われています。

 

 

・参考文献

「皇室」令和6年夏103号(公益財団法人 日本文化興隆財団)

「令和の大嘗祭 麁服」(特定非営利法人あらたえ、阿波忌部麁服調進協議会発行)

地域資源を活かす 生活工芸双書「大麻(あさ)」(農山漁村文化協会)

祝・14周年、さぬきいんべ年末感謝祭(本年も1年誠にありがとうございました)

毎年開催させていただいております年末感謝祭。

今年は14周年を祝い、15周年を予祝して、開催させていただきます。(2024年12月31日まで。2025年1月4日に、さぬきいんべは15周年を迎えます)

感謝をこめて、計1万円以上お求めの方に、しめ縄や鈴緒など、神社仏閣用の麻製品を調製している京都・山川製のオリジナル国産精麻アクセサリー《2トーン》をお1つプレゼントさせていただきます。これは、神道関連物の製作の余材が偶然できたそうで、それを生かすべく手仕事によって1つひとつ生まれた他にないものです。(年末のしめ縄ご予約の方には別の特別特典をお付けいたします)

京都・山川製の国産精麻アクセサリー《2トーン》(非売品)
京都・山川製の国産精麻アクセサリー《2トーン》(非売品)

1月に「麻農家になりたい」、四国の麻栽培を再生させたいと考えている方、3人で愛媛・伊予市で対談してから、話がすすみ、7月28日を皮切りに、そこでしか手に入らない自然栽培、自然農法の作物、そ
の加工品がならぶ「自然マルシェ」が同市の後援で毎月1回開催されるようになりました。

11月17日には同じく伊予市の後援で、日本「麻」文化フォーラムが開催されました。4人のゲストと、東京ほか四国4県の出店者が集まり、来場者も多数いらっしゃった由(結果として、残念ですが足を運べませんでした)。愛媛での麻栽培、四国の麻栽培再生(四国産の精麻、オガラ、麻の実など)へ歩みはじめたと思います。

夏から秋にかけて2年ぶりに大麻の麻縄活用コンテスト(第3回)を開催させていただきました。多数ご応募をいただき、どの応募作もよく考えられていると思いました。(今後、広いご意見をいただくために一般投票を採用したいと思っています)

今年も昨年につづき通常通り、地元「西条まつり」〔伊曽乃神社、嘉母神社、石岡神社、飯積神社の4つの神社の例祭(秋祭り)の総称〕が盛大におこなわれました。

一般の方や神社仏閣向けに国産の麻製品(藍染め、草木染め含む)がさらに普及しますように、四国の麻栽培が次々再生、後世にすばらしい麻文化が継承されますように祈念いたします。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

webページからだけでなく、お電話、FAX、メールでのご注文も承っております。

陰陽師・安倍晴明が讃岐で出生した説と京都・晴明神社の五色の鈴緒

はるか1000年の昔、怨霊や物怪(もののけ)が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する京の都に、傑出者と称された稀代の陰陽師がいました。

式神(陰陽道などで使われる鬼神・使役神、目に見えない存在)をあやつり、瀕死の者を蘇生させ、貴人にかけられた呪いを祓ったのが陰陽師・安倍晴明(921~1005)です。

 

香川県高松市の南方、高松空港に近い香南町由佐地区に冠纓(かんえい)神社が鎮座します。(何度かお参りしたことがあります)

同社には安倍晴明が神主をしていたという伝承があり、境内には晴明を祀る安倍晴明神社があります。また、丸亀京極家編纂の「西讃府誌」によると、讃岐国香川郡由佐に晴明が生まれたとされています。

一方、京都市上京区晴明町に鎮座する晴明神社は寛弘4(1007)年、晴明の偉業をたたえた一条天皇の命により、その御霊を鎮めるため、晴明の屋敷跡に創建されました。応仁の乱で荒廃したことをきっかけに現在の場所(京都市上京区晴明町)にご遷座されました。

京都・晴明神社の鳥居(晴明桔梗紋)
京都・晴明神社の鳥居(晴明桔梗紋)

同神社の鈴緒は緑・黄・赤・白・黒と陰陽五行の五色の麻が撚られたもので、しかも撚り房です。(前の代の鈴緒のときにお参りしました)

 
 
 
 
 
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中国から移入された陰陽五行説を基礎とした占いによって吉凶を判断することを得意とした「陰陽師」、同社の鈴緒が五色であるのは必然のように思われます。

なお、紫式部を主人公にしたNHK大河ドラマ「光る君へ」では、安倍晴明をモデルにした人物が登場しています。

 

 

・参考文献

「呪術の世界」(平凡社)

 

四国・剣山の山の神々、忌部修験道と麻

6年前、徳島県の剣山(標高1955メートル)山頂直下に鎮座する剣山本宮宝蔵石神社(祭神:素戔嗚命、安徳天皇)の神麻しめ縄奉納神事に参加しました。(そのレポートはこちらをご覧ください)

剣山には修験道の行場があります。また神社の看板に「四国太郎山忌部修験 霊峰劔山頂上の宮」とあります。

かつて剣山は石立山(太郎笈・太郎山)と呼ばれ、もともとは吉野川水系の水源地をつかさどる山の神として宝蔵石を磐座に、古代より忌部氏が崇拝してきた神聖なる山でした。

しめ縄奉納神事の最後に、「御宝剣加持」があり、5~6人ずつ精麻の祓串、神楽鈴とでお祓い、御宝剣の加持を受けたのですが、この御宝剣は平安時代末期に、幼帝・安徳天皇が納めた剣で、これより以降剣山、剣山大権現と呼ぶようになったそうです。その剣に触れることで神霊と同体になり、神霊のもつ力をいただくことができるとされます。

宝蔵石神社での御宝剣加持の様子(奉納された麻のしめ縄、鈴緒)
宝蔵石神社での御宝剣加持の様子(奉納された麻のしめ縄、鈴緒)

徳島最古の忌部修験道は吉野川市山川町の高越山の高越寺で鎌倉時代に創始された由。

修験道は、霊山にこもり厳しい修行を行うことで、神秘的な力を得て、その力で自他の救済を目指そうとする日本古来の山岳信仰と密教とが集合した神仏習合の宗教です。

その実践者は修験者、山伏(やまぶし)と呼ばれ、開祖は奈良時代の大和葛城山(かつらぎやま)を行場とした役小角(役行者)とされます。

奈良県の吉野と和歌山県の熊野を結ぶ修行の道「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」はユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の登録遺産となって今年で20年です。(現在大峯に入り、駆け抜ける修行を「奥駈(おくがけ)」と呼びますが、平安時代頃は「奥通(おくどおり)」と呼ばれていたようです)

修験者が衣服の上に着る麻の法衣を鈴懸(すずかけ)といいます。心身の穢れを祓い清める修験道においても麻が用いられるのは当然のことと思われます。

 

 

・参考文献

「山の神々と修験道」鎌田東二監修(青春出版社)

劔山本宮劔神社例大祭と剣山忌部修験道の歴史パンフレット」(一般社団法人忌部文化研究所)

 

次はフランスへ、初の東型の神楽鈴・国産大麻(精麻)五色緒付き

2月にアメリカへ渡った神楽鈴・国産大麻(精麻)五色緒付き

6月にはイギリスではじめての神社、フォーダム松尾神社の奉鎮祭にて前天冠・国産精麻五色房付きをつけた謡曲仕舞奉納家・一扇様が「みろく涼香舞」を奉納されました。

そして、次はフランス在住の方から神楽鈴・国産精麻五色緒付きのご依頼をいただきました。

神楽鈴はこちらで書いたとおり2種類(東型と西型)あり、さぬきいんべでは一般によく出る西型を標準にしておりますが、今回は東型。

神楽鈴・国産精麻五色緒付き(草木染め版)、写真は西型
神楽鈴・国産精麻五色緒付き(草木染め版)、写真は西型

 

東型の神楽鈴の国産精麻五色緒付きははじめての製作になります。

今年はフランスの首都、パリでオリンピック、パラリンピックが開催され、日本選手のメダルラッシュがつづきました。

神楽鈴はフランスの地でどんな音がするでしょうか?

現地からのご報告が楽しみです。

天照大御神がお召しになる衣を奉る「神御衣祭(かんみそさい)」

皇祖・天照大御神(あまてらすおおみかみ)をお祀りし、日本国民の総氏神として崇敬される伊勢神宮

毎年5月と10月の14日に神宮でおこなわれる「神御衣祭」では、天照大御神に「和妙(にぎたえ)」「荒妙(あらたえ)」の2種の神御衣(かんみそ、神様がお召しになる衣)が捧げられます。

「妙」は布を指し、和妙は目が細かくやわらかな絹布、荒妙は目が粗くかたい麻布です。以前、徳島・木屋平の阿波忌部直系、三木家の第28代当主、三木信夫さんをたずねた際、大嘗祭に調進される麻織物、麁服(あらたえ)の「あら」とは「向こうが透けて見えるという意味」と教わりましたが、日本語は言霊ですのでその意味は同じようです。

和妙は内宮(皇大神宮)の所管社である神服織機殿(かんはとりはたどの)神社、荒妙は同じく神麻続機殿(かんおみはたどの)神社の機殿で、古式のままに織り上げられ、奉職の前後には両社で祭儀がおこなわれます。

神宮の恒例祭典のなかでも、神御衣祭は神嘗祭(かんなめさい)、月次祭と同じく神宮固有の祭りであり、ご鎮座当初にさかのぼる由緒を持ちます。

大宝元(701)年に制定された「大宝律令」の「神祇令」には、朝廷の祭祀をつかさどる神祇官が関与する国家的祭祀として「神衣(かんみその)祭」が挙げられています。

また、延暦23(804)年に神宮から朝廷に撰上された「皇大神宮儀式帳」や、延長5(927)年に成立した「延喜式」の「伊勢大神宮式」には御料(ごりょう、神々や天皇、貴人が使用する物。衣服や飲食物など)の品目、数量や祭儀の詳細が記されています。

神嘗祭、月次祭、祈年祭、新嘗祭とならび神御衣祭が「大祭」とされるのも、こうした格別の由緒ゆえです。

天照大御神と神御衣との関連性ついては、古事記や日本書紀に、天照大御神が神聖な機屋で織女に神御衣を織らしめ、あるいは自ら織られた旨が描写されています。

 

春と秋にお召しものを奉ることから、神御衣祭は「神様の衣替え」であると説明されることがあります。

古くは神嘗祭の当日に神御衣がお供えされていた事実から、より深い意味をもつと想像されます。

神宮の恒例祭典でもっとも重儀とされる秋の神嘗祭は、天照大御神に新穀を奉り、大御神のご神威を更新するお祭りです。

同じように、神御衣祭の本義は、大御神に新たなお召しものを奉ることにより、ご神威のさらなる高まりを願うものと考えられます。

なお、和妙の御料となる絹糸は古来、三河地方(愛知県東部)で産する「赤引の糸」(清浄な糸の意)とされており、現在は愛知県の豊田市稲武地区と田原市から奉献されています。

一方、荒妙の原料となる麻は、昔は近在の御麻生園で生産されていましたが、現在は奈良県月ヶ瀬で産するものが用いられています。

 

 

・参考文献

「皇室」令和6年夏103号(公益財団法人 日本文化興隆財団)

「現代語古事記」竹田恒泰著(学研)

 

 

11月17日開催、日本「麻」文化フォーラム展示用の国産大麻(精麻)製鈴緒が完成

取扱い製品を皆さまに見ていただく自宅の展示ギャラリー国産大麻(精麻)製の鈴緒(すずお)をと思っていました。

鈴緒とは神社の拝殿前に吊されている綱で、参拝者が振り動かして鈴を鳴らすための神具です。

このほど、11月17日開催の日本「麻」文化フォーラムでの展示用にその鈴緒を製作、完成しました。

太さは1寸(約3センチ)、長さは3尺(約90センチ)の貴重な国産精麻でできたもの。六角桐枠付きの本格派で、一般の神社向けなどとしてよく出るサイズでもあります。

当日はこの鈴緒を振って、本物の「鈴祓え」を体験していただきたいと思っております。

鈴はその音色で神霊をまねくとされ、鈴緒を振ることでその人を祓い清めることから「鈴祓え」と呼ばれています。精麻でなわれた鈴緒は神霊と人をつなぐ架け橋です。

日本麻文化フォーラム2024(愛媛県伊予市)

 

日本麻文化フォーラム2024(愛媛県伊予市)

当日はご覧の4名のゲストと、出店で東京ほか、四国4県から同志が集まります(麻心、あわたま、こころ商店、caravan SHANTI SHANTI、牧工房、本藍染めTonbiii、お麻守り屋青游庵、infinity harmony、お昼寝ぴーちゃん、精麻セラピーNOAH、よろぷふ堂、あさとしずく、大麻飾り工房、Mi-Co Lodge、その他、飲食の出店もあり)

ゲストの吉岡敏朗監督は2017年、徳島・大麻比古神社への麻のしめ縄奉納の際にお会いしました。

また、岡沼隆志さんは2016年、京都での麻のイベントの際、お会いしましたが、当時こうおっしゃっていたことを思い出します。「個人的に毎年、(香川県)善通寺市の大麻神社と、奥の院にあたるのでしょうか?大麻山の龍王社(実際は金刀比羅宮の末社)にお参りさせていただいておりご縁を感じます。」

当日は麻に詳しい地元神社の宮司、徳島で麻栽培を目指している人もこられると聞いております。

11月17日、会場でお待ちしております。(別の日でもお問合せいただければこの鈴緒を見ていただけます)

四国の麻栽培再生キャンペーンpart3(再)も延長して開催中です。