4/6(日)京都の水火天満宮、4/18(金)出雲大神宮にて「みろく涼香舞」を奉納

きょうから4月、新年度。

入社式や入学式、配置換えやクラス替えなどがおこなわれる時期です。

謡曲仕舞奉納家・一扇様は、京都の神社やお寺などで、お能の曲を謡いながら舞う「みろく涼香舞」を奉納されています。

今年も4月6日(日)の水火天満宮(京都市)の櫻花祭で奉納される予定だそうです。

昨年6月に、松尾大社(京都市西京区)の海外初の分社、かつイギリスではじめての神社となるフォーダム松尾神社の奉鎮祭でもこの「みろく涼香舞」を奉納された一扇様。

日々進化されているとのことですが同日、観世流(梅若派)緑幸会主宰の能楽師・井上貴美子氏、井上須美子氏、緑幸会メンバーによる仕舞も奉納されます。

 

4月12日(土)には、SAIJOBASE 3階研修室(旧西条市こどもの国、愛媛県西条市)にて観世流の能楽師・越賀(こしか)隆之氏〔国の重要無形文化財「能楽」保持者(総合指定)、いわゆる人間国宝〕を講師にお迎えし、「春の能楽サロン」~能楽師が語る『安宅(あたか)』~が開催されます。

『安宅』は能の代表作で、日本の歴史、文化、そして美意識や国柄を能楽ほど表すものは他にないとのこと。

能楽には、小鼓、大鼓、締め太鼓が欠かせませんが、その表革と裏革を締め合わせる調べ緒(調べ)という麻紐がつかわれます。

 

さらに4月18日(金)に出雲大神宮(京都府亀岡市)で鎮花祭(はなしずめのまつり)が斎行され、シテ方観世流緑幸会が奉納、一扇様による「みろく涼香舞」が『熊野』の演目で奉納されます。

鎮花祭は、疫病と干ばつを鎮め病気平癒と雨乞いの神事で、平安時代より千年余り続いているそうです。

みろく涼香舞は、国産精麻の五色紐がついた前天冠を身につけて舞われます。

「面白い」という言葉のルーツ、天岩戸神話と世阿弥の伝えたかったこととは

あわれ あなおもしろ あなたのし あなさやけ おけ

平安時代の歴史書、「古語拾遺(こごしゅうい)」によると、天照大神が御身をお隠しになった天の岩戸から再び世に出てこられたとき、闇に再び御光をいただいてお喜びになった神々が謡い舞った歓喜の情を表した場面の言葉です。

これが「面白い」という言葉のルーツともいわれています。

「おもしろ」は天照大神の出現で明るくなり、互いの「面」が「明白(しろ)」くなったことを言っています。

元内掌典の髙谷朝子氏は生前、この言葉が大好きだったそうです。

一方、室町時代に能を大成した世阿弥(ぜあみ)は、森澤勇司さん〔能楽師 小鼓方、国の重要無形文化財「能楽」保持者(総合指定)、いわゆる人間国宝〕の著書、「超訳 世阿弥」によれば「面白い」の言葉のルーツについて上記の神話に触れた上で次のように語っています。

遊学(ゆうがく=猿楽能)の「面白」とは無心の境地のことである。無心というのは心を通り越した感動を言う。無心に面白いという心はただ「うれしい」ということだろう。無意識にニヤっとしてしまうようなことなのだ。『拾玉得花』

言葉はちがいますが、意味は同じことを言っているのではないでしょうか。

また、「面白い」という言葉がなかった時代、「面白い」はどう表現していたのでしょうかという問いに対し、

「面白い」「花」「妙なる」は、すべて同じ意味である。ただ、これには上、中、下の区別がある。「妙なる」というのは言葉で言い表せないもの、これを感動と認識するのが「花」、言語化したものが「面白い」である。『拾玉得花』

「面白い」の言葉の定義について世阿弥は、かみ砕いて説明をしてくれている感じがします。

世阿弥の哲学を土台に600年間、途切れることなく上演されている能楽。能楽の物語は9割が目に見えない世界を描いているそうです。

 

 

・参考文献

「古語拾遺」斎部広成撰、西宮一民校注(岩波書店)

「皇室の祭祀と生きて」髙谷朝子著(河出書房新社)

「超訳 世阿弥」森澤勇司編訳(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 

日本の麻文化を守る。大鼓、小鼓、締め太鼓の麻製「調べ緒」も取扱い

昨年、第10回日本麻フェスティバルin吉野川~麻植と麁服~にて鼓調べ緒(しらべお)紐の復元の展示があったことは、こちらに書きました。

調べ緒(調べ)とは、能楽や歌舞伎はじめ、全国各地の祭礼には、小鼓、大鼓、締め太鼓が欠かせませんが、その表革と裏革を締め合わせる麻紐のことです。(その締め具合によって音程を変える調律の役割も担います)

調べ緒の製作には30以上の工程がある上、演奏家の細かいニーズにも対応しなければなりません。
調べ緒を製作する職人の高齢化、減少により、神社仏閣用の麻製品を手がける京都・山川へ昨春、相談が持ちかけられ、山川で調べ緒の製作もできるようになりました。

小鼓の調べ緒は、少し緩みをもたせて掛けます。演奏する際は左手で調べ緒を握り、張力を変化させることで音程を変え、右手の打ち込みの強弱と組み合わせて多様な音色を打ち分けています。

一方、大鼓と締め太鼓の調べ緒は、非常に固く締め上げるので、そうした使用に耐えるように綯う(※)ときも固めに仕上げます。※繊維をより合わせることを綯(な)うといいます。
調べ緒は音色を左右する楽器の重要な一部であり、その扱いも演奏のテクニックの1つであるといえます。

同フェスティバルで鼓調べ緒紐の復元の展示に関わった能楽師・大倉正之助さん(囃子方大倉流大鼓、重要無形文化財総合指定保持者、いわゆる人間国宝)いわく、「現在では(調べ緒)はナイロン製に変わりつつあり、私たちのような伝統従事者、重要無形文化財の人間ですらナイロン製を使っているという現状」とのこと。

国産の精麻で製作できます。また各種鼓とともにお求め可能になっております。お問合せください。

 

 

・参考文献

「日本の芸能を支える技V調べ緒」パンフレット(東京文化財研究所)

「京の手仕事 名人寄席」吉田敦著(文理閣)

国産大麻(精麻)の神仏具と、観阿弥とともに能楽を大成した世阿弥の名言「秘すれば花なり」

さぬきいんべが、おお麻(ヘンプ)専門神具店と称するようになり2年半が過ぎようとしています。

職人が製作する国産大麻(精麻)の神仏具と、父の観阿弥とともに能楽を大成した世阿弥の名言「秘すれば花なり 秘せずば花なるべからず」に共通点があるように思い、ご紹介させていただきます。

秘すれば花なり 秘せずば花なるべからず「風姿花伝」

秘密にすることといえば、芸道には秘伝というものがあります。師匠から受ける特別な伝授ですが、中には口外しませんと誓いを立てなければ教えてもらえぬこともありました。ところが秘伝の中身というと、意外に単純なことで、当たり前のことのように思えるケースも少なくありません。ですから世阿弥に言わせますと、秘伝というのは秘密にしているからこそ皆が知りたいと思う花(珍しさ)があるので、公開してしまったら花ではなくなってしまうと言います。しかし、秘伝を受ける側に力量があれば、当たり前と思えることの中に、本当の秘伝があることに気づきます。

千利休がある人から茶の湯の秘伝を教えてくださいと頼まれました。利休は、茶の秘伝は夏は涼しく冬は暖かく、炭は湯の沸くように、茶はおいしくたつようにと言いました。しかしそれを聞いた人はそんな当たり前のことを、と憤慨しました。すると利休は、それがおできになるのなら、私はあなたの弟子になりましょう、と言いました。秘伝と言われても、当たり前のこととしか受け取れないのは、その人が当たり前のことの大切さを分かっていないからです。そういう人が多いものですから世阿弥は秘すことの大切さを強調したのではないでしょうか。〔「楽苑87号」熊倉功夫、日本文化をつくった人々第三話世阿弥(SHUMEI PRESS)〕

職人が製作する国産大麻(精麻)の神仏具は、縄が基本です(例:しめ縄、鈴緒)。麻縄自体がつくり方をふくめ秘伝ではないでしょうか?

日ごろ職人からその製品についてさまざまなことをうかがいますが、軽々しく口外できないことが多いように感じます。

これと同様に、神道は言挙げしないと言われます。言挙げしないとは言葉にして言い立てしないということ。「秘すれば花なり」と似ています。たとえば、所作の「型」のなかに秘伝があるように思います。「型」のなかにすべてが織り込まれているということです。

当たり前のようでいて当たり前でない。ずっと携わってきて、一見地味かもしれないそこが日本文化のキモなのかなと思うのです。

大麻(あさ)だけでなく、日本にある様々なものの本来の良さが、本質から大切にされていくといいなぁと思います。

 

2023年も次々。謡曲仕舞奉納家・一扇様の「みろく涼香舞」今後の奉納予定

何度かご紹介しています、令和の新しい「能」としての「みろく涼香舞(すずかまい)」創始者、謡曲仕舞奉納家・一扇様。

能楽師・井上和幸先生に師事、2009年からお能の仕舞を謡いながら舞う「謡曲仕舞」という新しい舞をはじめ、2022年3月7日の「みろく涼香舞命名披露会」以降、「みろく涼香舞」を京都の神社やお寺などで奉納されていらっしゃいます。

「みろく涼香舞」が多くの人に触れ、大成されてから650年とも700年ともいわれる能楽(世界無形文化遺産)に興味をもっていただく一助になれたら、また、心の平和を感じていただけるよう、本当に平和で幸せな世をみんなが実感できるようにという想いをもって活動されています。

3月に神泉苑、4月には水火天満宮、出雲大神宮、5月に再び神泉苑など、2023年になってからも次々奉納をつづけています。

一扇様の今後の奉納予定は下記のとおりです。(日時などが変更になる場合がございます)

2023年7月7日 九頭竜大社(11時頃より)アクセス 

8月27日 梨木神社

10月21日 出雲大神宮

11月12日 嵐山もみじ祭

11月25日頃 出雲大神宮(紅葉ライトアップ)

詳細は一扇様のブログ「和み文化の風の声」をご覧ください(事前にお知らせがあります)。

なお、一扇様には、前天冠・国産大麻(精麻)五色房付き神楽鈴・国産精麻五色緒付き(草木染め版)をご活用いただき、また「日本の伝統文化を継承し、光あふれる世界へ」という理念にも共感いただいております。

「三拍子そろう」は、本来は小鼓、大鼓、太鼓(または笛)の拍子がそろうことを言います。このようにふだん何気なくつかっている言葉で能楽からきたものがあります。他に「檜舞台に立つ」、ノリが良いの「ノリ」などもそう。

和の精神、平和への祈りがさらに広がっていきますように。

 

 

 

・参考文献

「謡曲仕舞奉納家 一扇」宮西ナオ子著(シンシキ出版)