75年ぶりに改正。大麻(あさ)を取り巻く大麻取締法はどう変わった?

ご存じの方も多いと思いますが、2023年秋の臨時国会で大麻取締法改正案が可決・成立、12月13日付の官報にて公布されました。

大麻取締法は大麻を麻薬として規制する法律と、適正に栽培する法律に分けられました。

後者は、「大麻草の栽培の規制に関する法律」(略称:大麻草栽培法)と名前を変え、栽培に特化した法律です。(2025年に施行予定)※法改正に向けた議論の経緯については、こちらに書いております。

この法律についてどう変わったか?産業用から見た主な点を下記に示します。

規制の対象

【×規制対象】

麻薬及び向精神薬取締法の「麻薬」に指定されるもの。

【○規制対象外】

成熟した茎、種子、政令で定める基準値を超えない大麻草の形状を有しない製品。

栽培の目的

医療および産業の分野への利用
例:大麻由来医薬品、国産のCBD製品、バイオプラスチック、建材、ヘンプ食品など。

免許の種類

【都道府県知事の免許】
 第一種大麻草採取栽培者(一般製品原料)
【厚生労働大臣の免許】
 第二種大麻草採取栽培者(医薬品原料)
 大麻草研究栽培者

栽培地の要件

全国的な統一基準を設ける。THC濃度が基準値以下の大麻草には、特に厳しい防犯体制を求
めない。THC濃度が基準値を超える大麻草は厳格な管理下での栽培が可能。

免許期間

第一種大麻草採取栽培者:3年
第二種大麻草採取栽培者:1年
大麻草研究栽培者:1年

種子の扱い

【播種用】
 海外品種は第一種大麻草採取栽培者が輸入可。
 第一種大麻草採取栽培者間の譲渡可。
【食用/飼料用】
  国内生産、全国流通のいずれも可能。ただし、発芽不能処理をすること。

花葉の加工

第一種大麻草採取栽培者が厚生労働大臣の許可を得れば、自社加工&委託加工が可能。

CBD製品

THCの残留限度値を設定(別途政令で定める)
THC検査体制を整備(登録検査機関、未定)
CBD医薬品として承認後に食薬区分の対象に(未定)
CBD化粧品は、ポジティブリストの対象に(未定)

 

以上、未定のこともあります。

伝統・日本文化の観点から見れば、新しい法制度ではTHC濃度が低い品種は麻薬に該当しないため、高さ2メートルを超える柵や監視カメラの設置などの過剰な規制を強いられることはないです。

日本の伝統を守るために、「第一種大麻草採取栽培者」の下で、若い農業研修生の育成などもできるようになると思います。

新規、産業用途の栽培者免許はほとんど交付されない状態がつづいていましたが、これから新しい産業、神事や伝統的な利用とともに大麻農家が増える方向になればと願うばかりです。

 

・参考文献

農業経営者2024年1月号(農業技術通信社)、【時事解説】75年振りに改正案が可決!大麻取締法はどう変わった?(赤星栄志)

 

 

ここまでわかった!大麻取締法、75年ぶり大幅改正でどうなる?

2021年1~6月に厚生労働省は「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を開きました。そのだいたいの内容はこちらに書きました。

そして、22年5月から大麻取締法等の改正に向けた具体的な審議が4回行われ、9月29日にとりまとめ(案)(全20ページ+補足資料全67ページ)が公表されました。(詳細は厚労省のwebサイトを参照)

1.医療ニーズへの対応

→ 大麻由来医薬品の製造と使用の解禁

2.薬物乱用への対応

→ 大麻使用罪の創設

3.大麻の適切な利用の推進

4.適切な栽培および管理の徹底

→ 植物の部位による規制からTHC濃度による成分規制への変更にともなう管理体制の整備(従来の植物部位による規制からTHC濃度による成分規制に移行するため、THC成分の検査体制を整備する)

 

大麻取締法等改正にともなう大麻栽培に関わる主な変更点(改正に向けた「議論のとりまとめ(案)」)は次のとおり。

・低THC品種であれば、特に厳しい防犯体制を求めず、都道府県の独自基準による運用から全国で統一した栽培要件となる見込み(高THC品種の栽培には厳格な管理を求め、医薬品原料用途へ)

・神事や伝統的な利用のほか、新しい産業利用を可能とする。(例:国産のCBD製品、バイオプラスチック、建材など)

・免許の種類は、大麻栽培者と麻薬研究者(麻薬および向精神薬取締法に基づく免許に一元化)へ。免許の期間も3年(麻薬取扱者免許と同じ)に延長を検討。

・播種用の種子は、種子のTHC濃度による管理を基本とする。北海道ヘンプ協会が強く要望してきた海外の優れた品種の導入も、一定の条件下で輸入可能に。国内の種子生産、全国流通を認める。

・CBD製品は、THC残留限度値を設定し、THC濃度の検査体制を整備する。

 

今後は、2023年の通常国会秋の臨時国会で改正案が提示され、衆参両院での審議・採決を経て、可決されれば24年1月約2年後に改正大麻取締法が施行される見通しです。

未定のことも多いようですが、2001~2年ごろ産業用大麻のことを知った私、ある方が2012年発刊の著書のおわりに「ぜひ大麻のことをよろしくお願いいたします。」と記していたのがようやくここまできた感じです。

 

 

・参考文献

「農業経営者」2022年11月号(農業技術通信社)、特集記事:大麻取締法の75年ぶりの大幅な改正でどうなる?! 日本の産業用ヘンプ(前編)(まとめ 赤星栄志・加藤祐子)

 

四国の麻をひらく、麻栽培再生が最初になるのは愛媛か?そう思う理由とは

2016年、徳島県の吉野川市(旧麻植郡)は麻栽培の復活に向け、行政主導で機運醸成のため講演やシンポジウムを開催するなど動いていました。

神社や地名など麻と関わりがあるところが全国と比較して多く集中、麻の中心、聖地ともいえる同市。創業(香川県高松市にて)の動機が、日本の麻文化を守ること、四国の麻栽培の復活だった私はついにそのときがきたと、同市が発行する広報誌(麻の情報が連載されていました)をチェックしたり、同市主催の麻シンポジウム(県外から麻農家を招待し講演、ディスカッション)へ出かけたりしました。

その6年前、麻と関係が深い阿波忌部氏の研究の第一人者、林博章先生の講演が愛媛県松山市であった際の録画をみました。そのなかで、日本で国魂が女神であるのは、阿波(オオゲツヒメ)と伊予(エヒメ)のみでもとは女性原理の国だったからだと先生は語っていました(古事記の国生み条参照)。

阿波忌部との関わりがあるとも言われる伊豫豆比古命神社(松山市)
阿波忌部との関わりがあるとも言われる伊豫豆比古命神社(松山市)

もしかすると麻栽培が再びはじまるとしたら愛媛県が最初?とは思いましたが、そのときは完全に地元びいきの発想でその後、前述の吉野川市の麻栽培復活への取り組みがはじまるとそんな考えはまったく忘れておりました。

吉野川市の取り組みはその後頓挫となり、2019年にお隣、美馬市木屋平の阿波忌部直系、三木家により令和の践祚大嘗祭に麻織物・麁服(あらたえ)が調進され、いまは2022年。大麻取締法の大幅改正がささやかれています。

1939(昭和14)年のデータ(「大麻のあゆみ」長野県大麻協会発行)では、四国のなかで大麻栽培面積が一番広かったのは愛媛(7.5ヘクタール)で次いで高知(7.1ヘクタール)、香川(0.1ヘクタール)とつづきます。(ただし、徳島はデータなし)

いい麻ができるのは寒暖差の大きいところと聞いたことがあります。三木家第28代当主の三木信夫さんもそのようなことをおっしゃっていました(三木家は標高550メートル付近)。いまで言えば、お茶の産地と一致するでしょうか(少し小高いところにありますね?)。

愛媛のエヒメとは、前述のように女神に由来します。神様のお名前が都道府県名であるのは全国で、愛媛だけです。それから、三木家をのぞいて麻栽培が最後におこなわれていたのも愛媛(八幡浜市の五反田柱祭りのたいまつ用に2007年ごろまで大洲市で栽培)、、

円安、コロナ禍も含めて日本にかぎらず世界中で自然現象、地震、噴火など神様のお働きが強く感じられる昨今。当初から言われているとおり、改正大麻取締法が「伝統的な大麻文化の保護」の方向にシフトされるとしたら、新規就農が現在より認められやすくなるとしたら、日本で唯一、女神のご神名がそのまま県名になっている愛媛が、麻栽培再生の先駆になるかもしれません。

※復活よりも軽い響きである「再生」を選んで記事タイトルといたしました。

 

 

・参考文献

「現代語古事記」竹田恒泰著(学研)

「日本の建国と阿波忌部」林博章著

「大麻という農作物」大麻博物館著

愛媛県の県名の由来

「吉野川市麻シンポジウム」でした(岸田益雄公式ページ)

2022年春以降、大麻取締法の大幅改正で大きく変わる日本の未来

海外では大麻の再評価が進んでいます。

このような状況の中で、ついに日本も「大麻取締法」が、70年以上の時を経て、大幅に改正されようとしています。

厚生労働省は2021年1月から6月にかけて「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を8回にわたって開催しました。

検討会での意見はすでに報告書として取りまとめられ、関係審議会の議論を経て、早ければ2022年春に法改正される見込みとなっていました。

どのような変化があるのかは主に2つです。

1.カンナビノイド医薬品の解禁

大麻に含まれる成分、カンナビノイドから製造される医薬品はG7諸国において日本のみ承認されていませんでした。

しかし、今回の見直しによって難治性てんかん薬「エピディオレックス」をはじめとするカンナビノイド医薬品の「試用」や「製造」及び「治験」の実施までも可能となりそうとのこと。

日本においても、製薬会社や大学等の研究機関がカンナビノイド医薬品の研究や開発に着手しやすくなるということだそうです。こちらは詳しくないのでこれぐらいにとどめます。


2.「日本の麻文化を守る」と明言

大麻は日本人にとって身近な農作物として、縄文時代からほんの70年前まで、衣食住や神事を支えてきました。

そもそも大麻取締法はGHQ占領下において、当時の大麻農家を守るための折衷案として成立したという経緯があります。

1954年には約3万7000件を数えた大麻農家は、化学繊維の普及と生活習慣の変化によって、2019年末には35名と激減しています。

しかし、神社における神事や神社の鈴緒、お寺の鰐口紐(鐘緒)、横綱の綱(ものとしての”横綱”)、麻織物、凧糸、弓弦、和紙、松明(たいまつ)、花火の助燃剤、茅葺屋根材、お盆のオガラなど、日本の文化に欠かせない素材として大麻は生き残っています。

そのような背景があるにもかかわらず、厚生労働省はこれまで、薬用型の大麻と繊維型の大麻をひとくくりにして啓蒙を行い、新規就農のハードルを高め、既存の農家には不合理とも思える管理体制を求めてきました。

しかし、検討会の中で「日本の麻文化を守るために」と題した会議が開催されました。

「栽培に対する合理的ではない通知の見直しや指導の弾力化を図ることが適当である。また、現在、都道府県ごとに策定している大麻取扱者の免許基準についても、全国で統一的な見解を共有することが適当である」

と明言。

さぬきいんべは、日本(四国)の麻文化を守りたいと思い、はじめましたのでこのことについては大歓迎です。

これに付随して、厚生労働省がホームページに掲載していた記事で、繊維型の日本の大麻栽培に警鐘を鳴らしていた「大麻栽培でまちおこし!?」の部分が2021年6月に削除され、厚生労働省は合理的な指導を超えた規制を緩和するよう、同年9月に都道府県へ通達を出しました。

これにより、新規就農に門戸が開かれることとなり、既存の大麻農家にとって大きな負担だった畑への監視カメラやフェンスの設置、見回りなど管理の負荷は軽減されていくではないでしょうか。(同年10月より厚労省と都道府県、栽培農家の3者協議がなされている模様)

さらには、休耕地活用や地方創生といった動きにつながる可能性が期待されます。

大麻取締法は、いつ改正されるか、実際どのような内容になるか。要注目です。

なお、2022年4月から厚労省審議会は大麻規制検討小委員会を設置し、大麻取締法の改正に向けた具体的な議論をおこなっています。自民党所属の国会議員らが勉強会を発足するなど、規制緩和に向けた動きが進んでいます。

 

 

・参考文献

ちいろば企画【ちいろば旅倶楽部NEWS】2021年8月1日号

「麻酔い」はない 厚労省が『大麻栽培でまちおこし!?』ホームページを削除 栽培農家の反発受けて(東京新聞2021年6月17日)

大麻栽培農家への過度な規制を緩和へ 厚労省が都道府県に9月通達(東京新聞2021年8月26日)

産業用大麻の栽培で過度な管理要件の緩和を 厚労省が都道府県に通知(東京新聞2021年9月11日)

農業経営者2022年6月号(株式会社農業技術通信社)

なぜ、日本の麻文化を守る、次世代へつなぎたいと思うか?

タイトルの答え、結論からいいますと、「日本の麻文化がなくなると、日本が日本でなくなってしまうから」と思うからです。

神道では、おお麻が使われています。何のために使われるか、清浄にするため、清浄を保つために、祓串で祓ったり、麻ヒモを結んだり、麻のしめ縄を掛けたりします。

この清浄にする、きれいにする、きれいになるというのが神道の根本にあり、これが日本人の価値観で、それに使われるのが、おお麻であると。

地域の祭りも神社、氏子があってこそです。

それから、日本人の名前として、麻里、麻央、麻理恵など、麻は成長が早くスクスク育つことからそれにあやかってつけられていると思いますし、名字に大麻(おおあさ)さんとか、麻植(おえ)さんがいらっしゃるのも麻にまつわるものと思います。

地名に、麻生、朝(麻)生田町、大麻町、麻、麻植などあるのもその地域が昔、麻に関わった痕跡と思われます。その歴史は古く、1万2千年前に麻の繊維が見つかっているところがあります。歴史がとにかく古いです。これらがそのままなくなってしまうとそれは日本ではなくなってしまうと私は思います。

2万軒以上あった麻農家が戦後、大麻取締法制定されてからしだいに減って、現在30軒あまりになり、栽培面積は10ヘクタール以下になっているのはそのまま日本の文化が縮小していっていることだと思います。

近年、伝統工芸、民藝、手仕事などが再評価されるなか、日本の麻文化、おお麻文化も需要がさらに高まっています。日本の麻文化を取り戻し、発展させ、後世に受け継ぐそれができればと思います。(特に、私は四国に生まれ麻に縁の深い四国にお世話になりましたので、四国の麻栽培を再生させることに注力したいです)