おお麻は有用植物で、茎は繊維製品、製紙材料になり、また麻の実はたんぱく質が豊富、脂肪酸などの含有バランスもよい健康食品として知られます。さらに油も抽出できます。
平安時代中期に編纂された「延喜式(えんぎしき)」は、実際に朝廷を運営するための施行細則、マニュアルの1つです。(延喜式はほぼ完全な形で残っているため、古代の研究で重要視されているそう)
たとえば延喜式(民部)では、「年料別貢進物」として、相模国(いまの神奈川県)から6斗、下総国(いまの千葉県北部と茨城県南西部、東京都東部)から7斗、常陸国〔いまの茨城県(南西部をのぞく)〕から7斗、下野国(現在の栃木県、群馬県一部)から3斗の麻子(麻の実)が貢納されています。
※1斗は、量の単位で10升(約18L)のこと。
「延喜式」(主計)では阿波国(いまの徳島県)からも中男作物(17歳から20歳の男子をつかって貢納する作物)として麻子が納められています。
平安時代にはこれらの地域が、おお麻の生産地として知られていたということです。
ちなみに、この時代は現代とちがい、ほとんど味付けの調理はしなかったようです。それだけに素材のおいしさが最も重要でした。
日本では、単に生きるために食べるのではなく、四季折々の自然からの賜物である豊富な食材をおいしくちょうだいすることこそが、神への感謝につながると考えていたのではないでしょうか?
・参考文献
「延喜式」虎尾俊哉著(集英社)