鋭い感受性を持った「巫女体質」、松井久子先生のご著書を読んで

このほど、瓊奈川神社宮司 松井久子先生のご著書、「巫女体質」(SeleneBooks)を拝読いたしました。

2020年6月に、ご縁あって神楽鈴・国産大麻(精麻)五色緒付き【玉翠(ぎょくすい)】が松井先生のもとにご奉納され、それ以来何かとお世話になっております。(奉納となった経緯はこちらにご紹介いただいています)

さぬきいんべでは、2017年から国産精麻の五色緒がついた神楽鈴、鉾先鈴を取り扱うようになり、その関係で巫女や巫女舞について調べていますが、女性が書いた書籍は今までなかったと思います。

 

この「巫女体質」という本は2021年10月に電子書籍として出版されました。

内容は一言で言えば、鋭い感受性を持った巫女体質の人たちに向けてのメッセージです。なかなか人に言えないことだと思いますし、巫女体質のことは巫女体質でないとわからないと思います。

それと近年、巫女体質という言葉が一人歩きしていることを受け、日本の精神文化を支える「巫女」の品位をおとしめてしまう恐れがあると懸念し、本を書かせていただくことにしたそうです。

ご購入者に新・巫女体質チェックシートのプレゼント付き。

この本を読んで救われる人がいらっしゃるかもしれません。

宮司として、また戦没者の慰霊や神前神楽舞の指導をし「巫女」を養成するかたわら、巫女体質とうまく向き合えずに悩んでいる方の支援をする巫女体質、巫病の専門家としてこれまで3000人以上の巫女体質の方と向き合ってきた松井先生の本をご紹介させていただきました。

なぜ、日本では「神様が国を生む(国生み)」「麻糸を績む(麻績み)」というか?

遠い遠い昔、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)の二柱の神が天上から「天の沼矛」で大海原をかき回したところ、矛先から滴り落ちた雫が凝り固まって「おのころ島」ができました。

二柱の神はそこに降り立ち、夫婦の契りを結んで誕生したのが、日本で最初に生まれた島、淡路島だと伝えられています。

続いて次々と島を生み、やがて誕生したのが日本だといいます。日本で最古の歴史書「古事記」に記されたこの壮大な天地創造のストーリーが今に伝わる日本神話です。

四国は伊予之二名島(いよのふたなのしま)として登場し、淡路島に次いで2番目にできました。

 

古事記では、国生みといって、神様が国をつくられたのではなく、神様が国を生んでるんですね。どうしてでしょうか?

伊弉諾神宮の宮司、本名孝至さんはこうおっしゃっています。

日本で初めてご夫婦となられた神様がお生みになった子供たちは日本の島々となりました。この「国生み神話」の中には、夫婦や家族の愛、悲しみ、苦しみ、確執など、まるで人間のような心模様が記されています。これは、神様が天上から人をつくられたのではなく、天から地に降りた神様が人と同じ姿をしていたご先祖であることの表れでしょう。日本では、現在の私たちの親、祖父母、代々を遡れば、神様が生まれた神代につながっていくと考えられています。(「AWAJI ISLAND 日本のはじまり淡路島 日本遺産」パンフレット(淡路島日本遺産委員会)P6より)

聞いたことがあるでしょうか、先祖は30代遡ると10億人を越えます。さらに遡ると、、神代につながっていきそうですね。

「先祖の魂は子孫に伝はる 我が身生まれてあるは、即ち是れ、先祖の身分かれたる故也」

江戸初期の朱子学者、林羅山は、神(先祖)と人の関係を上のように説いています。親の魂は子に引き継がれ、その親にも両親があり、さかのぼっていけばいくほど、顔も知らない先祖の魂(こころ)や肉体が、今を生きる自分に積み重なって、引き継がれていることを思い知らされます。

一方、麻糸を績(う)むというのは精麻を細かく裂いて指先で均等の太さにつなぐこと。麻績(おう)みといいます。

国生みと麻績み。字はちがいますが、同じ「うむ」「うみ」です。

共通点は親(元)とつながりがあることだと思います。その親(元)と本質が同じということです。「つくられた」だと、親(元)とは異質な感じがしませんか?

日本のもとは伊弉諾尊、伊弉冉尊という神様、麻糸のもとは精麻、そのつながりを「うむ」という言葉で表しているのではないかと思いました。

 

 

・参考文献

「AWAJI ISLAND 日本のはじまり淡路島 日本遺産」パンフレット(淡路島日本遺産委員会)

「AWAJI ISLAND guide book」(淡路島観光協会発行)

「現代語古事記」竹田恒泰著(学研)

「神様の御用人6」浅葉なつ著(メディアワークス文庫)

年末年始を迎えるにあたり心得ておきたいこと(2021-2022年)

年末年始を迎えるにあたって、3つお伝えさせていただきます。(年々状況が変わっていっていますので、例年と特にちがう点にはアンダーラインを入れました)

まず1つ目。毎年しめ縄の注文をいただく方がいらっしゃいます。今年もご希望の方に年内にきちんと届くようにと、国産大麻(精麻)しめ縄&鈴緒 年内お届け超早期ご予約ページを開設しております。

例年ですと12月初旬までにご予約いただければ年内のお届けが可能です。しかし、製作が12月に集中しすぎるため職人の負担軽減にと、上記の超早期ご予約の受付締め切りを今年は11月15日に早めております。ご了承くださいませ。

※ご予約は終了しました。多数のご予約ありがとうございました。

大根型、牛蒡型、各種和かざりをお求めの方はさぬきいんべwebショップよりご注文ください。在庫のあるものはもちろん、在庫切れになっている場合や、既製ではない「こんなしめ縄を」という方は12月10日頃までにご注文いただければ年内お届けが可能です。2021年11月27日追記

 

2つ目。「しめ縄は毎年変えた方がいいですか?」とお問合せいただくこともあります。

答えは否。ご予算などに応じて新しくしたらと思います。スーパーで売られているような市販のしめ縄、しめ飾りなら躊躇ないとは思いますが、国産精麻、あるいは稲わら製の職人の手仕事でできたしめ縄は大切に使いたくなる人も多いのではないでしょうか。

氏子からしめ縄や鈴緒が奉納されている神社では毎年変えてないところも多いです〔それでもすす払い(家庭でいう大掃除)をし紙垂を新しくしたりして新年を迎えているところが多数ですが、神職がしめ縄を手づくりし新しくする様子を伝えるニュースや新聞記事を近年、年末に頻繁に見るようになってきている気がします〕。

本年はそういった方のために、紙垂の取扱いを開始しております。もし、自分でしめ縄、鈴緒をつくることができるなら、それが一番です。(自分の誠をお捧げする意味で)

ちなみにしめ縄、鈴緒を民芸とみるなら、使っていく中での素材の変化にも目を向けて楽しんで、あるいは使用後はお焚き上げせずに大切にしまっておくのもありかもしれません。濱田庄司氏(1894~1978年)はよく「作ったところで半分だ。そこから先は使い手が作る。だから、使うことも創作だ。」と話しておられたようです。例えば新しい青い竹かごが使っているうちにアメ色になるとかありますが、そのへんの判断は各自にお任せいたします。

もし、迷うようなことがありましたら、心の声を聞いてみるといいと思います。心がイエスと言った方、心が明るくなった方、心が軽くなった方を選ぶのをおすすめします。

 

3つ目はその根本にある理由です。

日本の神道は黄泉(よみ)の国から帰った伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の禊ぎにみられるように「きれいになる」、また「再生」を尊ぶという、言わば「新生」する精神があります。これに付随し、黄泉の国から帰ることを意味するよみがえり(黄泉がえり)という言葉もあります。

また常若(とこわか)といういつも若々しいさまをいう言葉もあります。前述のすす払いや大掃除、お神札、しめ縄などを1年毎に納めて新しくする背後にはこういう意味合いがあります。

なお、使い終わったものは、社寺の境内等で家庭の門松やしめ飾りなどを一緒にはやす(燃やす)正月の伝統行事、どんど焼き(左義長、とうどうさん、地域によって呼び名がちがう)へ。そこで1年の無病息災を祈りましょう。

年越しの大祓も忘れずに。日々の生活の中で気づかないうちに生み出した目に見えない罪穢れをすべて祓い清めて新しい年を迎えます。

新年は1年で一番神様を感じる時ではないでしょうか。その新年を迎える前と、迎えた後。伝統行事は1年を健やかに過ごす先人の知恵です。

皆様がいい年末年始をお迎えいただけますようにお祈りいたします。

地域資源を活かす 生活工芸双書「大麻(あさ)」(農山漁村文化協会)

書籍のご紹介です。

きちんと調べようと思うと、専門書のようなものに行きつくのですが、こちらは写真や挿絵が多く、比較的わかりやすいと思います。(巻頭数ページはカラー写真)

日本人の暮らしを支えた植物「大麻(あさ)」を見直す

本書は、大麻の植物としての特徴、薬物問題と大麻栽培の現状、これまでの日本での大麻利用の歴史を概観します。

戦前までの日本各地で栽培・利用されていた歴史を20道県にわたって掘り起こし、栃木県の野州麻の栽培を詳述したあと、大麻の繊維、麻幹(おがら、皮を剥いだ大麻の木質部)などの利用をまとめています。

忘れられようとしている、日本列島に住む人間の日常生活にかつては恩恵をもたらしていた植物資源大麻(あさ)に光を当てます。(見開きより)

 

地域資源を活かす 生活工芸双書「大麻(あさ)」(農山漁村文化協会)
地域資源を活かす 生活工芸双書「大麻(あさ)」(農山漁村文化協会)

農文協(一般社団法人 農山漁村文化協会)という耳慣れないところから出版とお思いかもしれませんが、「ヘンプ読本」(赤星栄志著)では参考文献として農文協の本が取り上げられています。

この本は、2年前の秋ぐらいに図書館の新刊コーナーで出会いました。同じシリーズで、「苧(からむし)」、「萱(かや)」、「楮(こうぞ)・三椏(みつまた)」、「漆(うるし)」、「桐(きり)」、「棉(わた)」、「藍(あい)」があります。近年、手仕事や民藝が見直されてきているのと時期を同じくして、「大麻(あさ)」を含むこれらが再び見直されてきているということですね?

私の読み方は目的の物事を調べるか、同じ本をしばらくぶりに開き「こんなことが書いてあった?」と気づくパターンかです。

「答えは現場にあり」ということで、つくったり染めたりする方が副読本としてお読みになると興味をもって読めるのではと思います。

 

 

 

・参考文献

地域資源を活かす 生活工芸双書「大麻(あさ)」(農山漁村文化協会)

 

いま、西条まつりに思う、1年が祭りにはじまり祭りに終わること

10月といえば、西条まつり

今年も規模縮小で斎行されますが、地元びいきということで書いてみます。

気がついたときには、祭りがありました。小学生のときは校区が、だんじりと太鼓台がある、神社でいえば伊曽乃神社と飯積神社の氏子が含まれていましたので、両神社の祭礼がある3日間、10月15日は(平日なら)朝礼のみ、16日、17日は休みでした。

学校も祭りへの参加を奨励していましたので、この3日間は昼も夜も、だんじりや太鼓台について行き、ロープで引っ張ったり太鼓をたたいたり楽しかった思い出しかありません。(2社とも宮出しは夜中~早朝)

伊曽乃神社・宮出しでのだんじりの奉納(2019年10月15日)
伊曽乃神社・宮出しでのだんじりの奉納(2019年10月15日)

 

いま思うと、西条は神様を大切にしている地域なんだと思います。(香川に住んでいたときは、ちょうさや獅子があったりそういうものがないことはないですが、祭りになるとお盆やお正月に帰ってこない人でも帰ってくるという西条市出身の人の気持ちは他地域の人には理解できないと思います)

西条市のカレンダーは10月からはじまると言われています。実際10月からはじまるカレンダーも販売されています。

「1年は祭りにはじまり祭りに終わる」

自然に溶け込んだ形で、大切なことを知らず知らず教えられてきたのですね。

西条まつりでは、氏子各町が保有するだんじり、みこし、太鼓台(のべ百数十台)が奉納しますが、奉納とは「神仏を楽しませ鎮めるため」です。

飯積神社前・太鼓台かきくらべ(2019年10月17日)
飯積神社前・太鼓台かきくらべ(2019年10月17日)

令和になって、コロナ禍のおかげで本当に大切なものは何かということが問われているように思います。もうおわかりかもしれませんが、大切なものの1つは神事です。西条でも昨年、感染拡大防止のため、だんじりや太鼓台の運行が取りやめになった中でも神事(各神楽所における)はおこなわれていました。昔からずっと続いてきていることです。

祭りの日が近づくとなんだかそわそわしてきます。早くだんじりの奉納やだんじり、太鼓台の統一運行が見られるようになるのを楽しみにしています。

西条は「住みたい田舎」No.1だそうです。移住されてきた方にとって、西条まつりはどう映るのでしょう?

自宅を”手仕事天国化”する計画を考えた結果

9月、自宅の西側にあった父の仕事場(工場)を解体しました。

建具関係の仕事をしていたため、大型、小型機械が数台あり父が仕事をしなくなった後どうなるかと思っていましたが、全部撤去すっきりしました。

跡地は更地となって駐車場(5~6台)にできそうです。

前々から漠然と自宅がギャラリーになればと思っていました。さぬきいんべ取扱いのものを展示できればという考えです。お店みたいな感じです。

母屋(東側)は昭和20年代の建築、築約70年の古民家で、使われている木が現代のものとはちがいます。母は壊せと前から言い、業者には更地になったところに家を建てて住んだらとか言われているのですが、ここ10年ぐらい、再生された古民家や古い建築を見てきた私は今のところ改修、再生をと思っています。(お世話になっている愛媛民芸館がホッとする場であることも理由として大きいです)

自宅、母屋の大黒柱。
自宅、母屋の大黒柱。

 

さぬきいんべはご存じと思いますが創業からwebショップのみでした。webショップならできるかも(やりたい)と思ったのがきっかけです。それが今年、精麻飾りのワークショップに参加するようになり、そうすると、精麻がほしい、取り扱っているものを見たいという声が出てくる、どうしてもそうなるのですね。

そのことと、父の仕事場の建物の寿命が重なりました。たまたまです。

目標としては、自宅がものを購入することもできるギャラリー展示場、そしてみんなが集まる場になればと思います。ワークショップなどイベントをすることにもなっていくのではないでしょうか。そうすればこれまでの私の活動、そして建物、敷地も生きると思います。

タイトルに”手仕事天国”と記したのは、手仕事の美しいものを集めたギャラリーの意味をこめました。天国は美の世界だと思うからです。

進展がありましたらご報告させていただこうと思います。