日本人のアイデンティティー、日本文化を再認識させる最近の映画

ここ数年、日本の文化に触れた映画が目につくようになってきました(思いません?)。

少し前なら、おくり人(滝田洋二郎監督、2008年公開)が第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したのを思い出します。

しかし、2011年の3.11以降でしょうか。だんだん様相が変わってきたことを感じます。

ここ数年で気になった映画を箇条書き(順不同、リンク先はそれぞれの映画の公式サイト)にしてみると、

麻てらす~よりひめ 岩戸開き物語~(2017年) 監督:吉岡敏朗

日本古来の大麻文化とその心を麻績みをする女性、“よりひめ”を軸に紹介するドキュメンタリー映画。ロンドンインディペンデント映画賞ドキュメンタリー部門にて佳作を受賞。2017年2月、大麻比古神社正式参拝(日本麻振興会主催)の際吉岡監督とお会いしたときもカメラを回されておりました。

神楽鈴の鳴るとき(2018年) 監督:小沼雄一 キャスト:濱田ここね他

国の重要無形民俗文化財「河口の稚児舞」を題材にした映画。 第7回富士山河口湖映画祭シナリオコンクール準グランプリ受賞。2017年半ばより精麻五色緒付き神楽鈴を販売しはじめた後でこの映画のことを知りましたので思わず注目。

紅い襷~富岡製糸場物語~(2017年) 監督:足立内仁章 キャスト:水島優他

富岡製糸場が世界遺産に登録されて3周年を記念した映画。絹に再び光が当たりました。同製糸場を設立したのが渋沢栄一と知り、それから主演が私の母校出身の女優、水島優さんなので◎。(^_-)

君の名は。(2016年) 監督:新海誠 

長編アニメーション映画。映画を見た人の感想を聞きまして、日本文化が映画の中にたくさんちりばめられていると思いました。

一礼して、キス(2017年) 監督:古澤健 キャスト:池田エライザ他

映画の中で弓道が登場します。弓道は礼に始まり礼に終わる!公式サイトのファビコンが弓道の的(まと)なのも乙。

先生!、、、好きになってもいいですか?(2017年) 監督:三木孝浩 キャスト:生田斗真他

こちらも弓道が登場します。私は弓道弐段ですので、2つのうちどちらの映画だったか忘れましたが、たまたま見ていたTVで紹介されていたことがあり思わず見入ってしまいました。

映画刀剣乱舞(2019年) 監督:耶雲哉治 キャスト:鈴木拡樹他

刀剣ブームの火付け役、「刀剣乱舞(とうらぶ)」の実写版。玉造りをされている青舟さんが刀剣がお好きで、よく刀剣のお話を聞くのでご紹介しておきます。^^

 

これらの映画たちは近年、外国人観光客の増加する中で、日本国内で日本の伝統文化、地場産業、伝統工芸、手仕事や民藝などが再認識されているのとシンクロしているかなと思います。

かくして時代は令和です。映画中で紹介されているもの、ことがもっとはっきり現実に現れてくるんではないでしょうか。

他にもあるんでは?もしご存じなら教えてください。

 

 

ある日突然訪れた糸魚川ヒスイ勾玉との出会い

2011年9月3日でした(9月3日は私の誕生日)。

「相互リンクお願いできませんか?」と玉造り工房「フルタマのヤシロ」というwebページの運営者からメールが届いたのは。

そのときwebページを拝見し、はじめて糸魚川ヒスイの勾玉を見ました。その美しさに感動し涙が出てきたことを思い出します。

勾玉の作り手は青舟(せいしゅう)さん。京都府の北部、京丹後にお住まいで、電話で話をして、さぬきいんべでペンダントにし販売させていただく運びになりました。たしかちょうど肥松の勾玉のペンダントを製作した後で、提案させていただいたところ快諾を得たしだい。

第1号モデルは「天座(あまざ)」。透明度の高い小ぶりの勾玉で国産精麻をなったヒモがついています。公開後ほどなくしてそのペンダントをお求めになったのは、なんとジュエリーデザイナーで、こんな感想をいただきました。

私の日頃の宝飾品デザイン・制作に際しても、さらっとした良い風が吹いてくる、そんな感じを受ける仕上がりを目指していますが、玉は更にしみじみとした良さを感じますね!宝飾品に於ける翡翠の品物とは別の世界が広がっています。

 

糸魚川ヒスイ勾玉ペンダント「天座(あまざ)」(第1作)
糸魚川ヒスイ勾玉ペンダント「天座(あまざ)」

その後、次々と勾玉、あるいは大珠のペンダントを必要な人の元へ届くように製作してます。(お求めになる人の声を聞いていると、この玉は本物であることがわかります)必要な人、必要な時期があるんでしょう。

縁とは不思議です。私は探していません。勾玉も向こうからやってくるのです。

あとで、「さぬきいんべ」という名前に起因(名は体を表す)していることが薄々わかっていきましたが、そのときはわからずご縁を大切に流れに乗っていったのが現在につながっています。

青舟さんとは2016年はじめに京都市内ではじめてお会いしました。電話の声のイメージと実物はぜんぜん違っていました。

青舟さんのお話はおもしろいです。

勾玉についてはいわゆる三種の神器の1つで、最後に来るのが勾玉と青舟さんがよく言っています。私もそんな気がします。

値段が高騰する前にどうぞ。(2016年、国石にヒスイが選定されてから、原石の価格は上がっていると聞いています)

さぬきいんべプロデュース、青舟さんの勾玉ペンダントはこちらへ。

今後も新作を作り続けたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。<(_ _)>

精麻についておさらい

精麻とは、アサの茎から表皮をはぎ、そこから表皮など余分なカスを取り除いたものをいいます。

極上の国産精麻
極上の国産精麻(1本)

黄金色でツヤがあり、新聞の文字が見えるぐらいに薄くひかれたものが上質とされます。(「色・ツヤ・薄さ」と私は覚えています)

なお、ちょっと古いですが福山雅治主演のNHK大河ドラマ「龍馬伝」で岩崎弥太郎宅の納屋に干している黄金色のは精麻と思われます(同ドラマでは栃木県鹿沼市の麻農家、大森由久さんが麻縄づくりを指導)。

今日では、神仏具や縁起物としての利用が多いです。

神道では麻は「神様のしるし」あるいは「神様の宿る神聖な繊維」とされ、神官がつける狩衣なども麻で作られています。また、お祓いの時に使用する幣や鈴緒などにも麻は欠かせません。

縁起物としては、結納で取り交わす友白髪があります。そして、魔をはらうなど呪術力があると考えられていて、ほかにもヘソの緒を縛る糸や死に装束、地域の祭礼など人生の節目や季節の節目に使用されてきました。

 

日本最大の生産地である栃木県で生産されたアサは、生産農家によって精麻、皮麻、苧幹などに加工され、野州麻の名称で全国に流通しています。

かつて、同県では生産地によって引田麻、把麻、岡地束、引束、板束、長束、岡束、永野束などの銘柄があり、結束の方法が異なっていましたが、栃木県では1933(昭和8)年に「麻検査規則」(昭和8年7月11日栃木縣令第46号)を定め、その統一を図りました。

同時に品質の統一を図るため、同年10月より等級検査が実施され、規格の統一が図られました。その結果、精麻は極上、特等、1等、2等、3等、4等、5等、等外の8つに区分されました。

検査は肉眼で行い、品質、長短、強力、色沢、乾燥、調製、結束の各観点より等級を定めました。例えば精麻の極上は「最も光沢に富み、清澄なる黄色か黄金色。手さわり、調製、乾燥すべてに最もすぐれ、繊維が強力なもの」、特等は「光沢に富み、清澄なる黄色か黄金色ないし銀白色。手さわり、調製、乾燥に最もすぐれるもの」などとし、それぞれの基準が設けられました。

野州麻(精麻)の利用 大正時代と現在
大正時代 現在
主な用途 出荷地 主な用途 出荷地
下駄の鼻緒の芯縄 栃木・東京・大阪など 神事・祭礼・縁起物用 全国各地
軍需用(綱・縄) 東京・神奈川など すさ(寸莎、建築用、壁のつなぎ材) 全国各地
綱の原料 東京・神奈川・愛知など 下駄の鼻緒の芯縄 東京・栃木など
魚網 茨城・千葉・神奈川など 綱(凧糸・山車綱等) 静岡・新潟など
衣類・蚊帳地 滋賀・奈良・福井など 衣類 滋賀・奈良など

(主な用途および出荷地の配列は出荷量の多さとは対応していない)

なお、栃木県でニハギ(煮剥)、精麻と呼ばれるものが、麻生産の歴史が古い広島県近辺ではそれぞれ、アラソ(荒苧・粗苧)、コギソと呼ばれます。

麻の茎の皮を剥いで精麻にするまでの工程は、地域によって多少のちがいがあります。

収穫後、麻の茎を折らずに蒸すところもあり、その場合は高さが2~3mにおよぶ桶が使用されました。こうした桶は、青森県立郷土館(青森市)、宮古市北上山地民俗資料館(岩手県宮古市)、朽木郷土資料館(滋賀県高島市)、石川県立白山ろく民俗資料館(石川県白山市)、広島市郷土資料館(広島市)、四国村(高松市)、宮崎県総合博物館(宮崎市)など全国各地の博物館施設で見ることができます。(その多くは麻だけではなく、楮や三椏などを蒸す時にも使用されたそうです)

 

 

参考文献

・「地域資源を活かす 生活工芸双書 大麻あさ」倉井耕一・赤星栄志・篠﨑茂雄・平野哲也・大森芳紀・橋本智著(農山漁村文化協会)

・「日本の建国と阿波忌部」林博章著