「えひめ麻再興プロジェクト(Ehime Hemp Revival Project)」~自然農法と精麻づくり~

2020年より、四国の麻農家が1軒もなくなっている(徳島・木屋平の三木家をのぞく)ことから、四国の麻栽培を願うキャンペーンをつづけてまいりました。

そして昨年、麻栽培を目指すため、愛媛県の伊予市の後援で「自然マルシェ」、11月に「日本麻文化フォーラム」が開催されました。

その過程で、無肥料・無農薬、いわゆる自然栽培、自然農法で麻を栽培し、神事でつかう麻、いわゆる精麻をつくることができるかを考えておりました。

オガラ、種等も自然農法で可能性が広がります。

何度もお伝えしていますように、愛媛県八幡浜市にて毎年8月14日夜におこなわれている四国唯一の火祭り、「五反田柱祭り」(県指定の無形民俗文化財)でつかわれるオガラ用に、お隣の大洲市で2007年ごろまで麻が栽培されていました。

自然農法を長年実施されている方や麻農家とも話し、道筋が見えましたので、「えひめ麻再興プロジェクト(Ehime Hemp Revival Project)」~自然農法と精麻づくり~ということでチャレンジして参りたいと思います。

なお、愛媛県の県名、「えひめ」は、古事記に登場する神様、愛比売命(えひめのみこと)に由来します。

古事記に登場する女神・愛比売命の名を継ぐ、神聖なる麻=「えひめ麻」です。

現在、国内の精麻の最大の産地は、栃木県です。そして、三重県産の精麻が一部の神社や個人向けにつかわれている状況です(「伊勢麻」という名前から誤解されやすいですが、こちらに書いているように伊勢神宮では使われていません)。連作は3年が限度といわれていますが、本当でしょうか?

私たちの想いは、日本の精麻文化を未来へつなぐことです。その灯が消えてしまった麻の文化を再びこの地によみがえらせて、再興の風を四国から日本全国に吹かせたいと願っております。

自然農法で精麻をつくる意義

・土を汚さずに、持続可能。(土本来の力を活かす)
・自然の循環のなかで育つ。無農薬・無肥料で繊維がとても清浄。
・祈りの農。古来の神聖な使い方にふさわしい「氣」のこもった素材。

そして、自然農法でつくるから、機械でひく精麻ではなく、手びきの精麻にこだわります。

キーワードは、自然栽培、自然農法、清浄な土壌、在来種(自家採種)、連作、種の保存(シードバンク)、四国ブランドの麻製品、それから麻農家、職人が増えていくことです。

まず、大洲市で2007年ごろまで麻の栽培がされていた上記の場所が昨年ようやくわかり、特定されました。

本年3月、自然農法のイベントが西条市で開催され、愛媛県内はじめ、香川、徳島、高知から330名ほど来場、盛況でした。

4月より、数少ない麻縄職人に待望の新人が加わり、日々まじめにがんばっています。

5月、一般社団法人縄文庄により麻のイベントが大洲市の少彦名神社にて開催され、地元の愛媛はじめ、香川、高知、岡山、愛知、東京から集まりました。大洲市は古い町並みや歴史的建造物を活用したまちづくりに取り組んでおり、「持続可能な観光地・世界一(2023年/オランダの国際認証団体より)」に選ばれています。

進捗をここに書いてまいります。

 

肥毒もて 穢れに穢れし日の本の 国土浄むる業(わざ)ぞ尊き

 

自然農法の根本は、土そのものを生かす事である。土を生かすという事は、土壌に人為肥料の如き不純物を用いずどこ迄も清浄を保つのである。そうすれば土壌は邪魔物がないから、本来の性能を充分発揮できる。(栄光 第七十九号 昭和二五年十一月二十二日発行)

 

『何故連作がよいかというと、土壌は作物の種類によって、その作物に適応すべき性能が自然に出来る。これも人間に譬(たと)えればよく分る。労働すれば筋肉が発達し、常に頭脳を使う作家の如きは頭脳が発達する。又人間が年中職業を変えたり居所を転々すると成功しないのと同様の理で、今日迄如何に間違っていたかが分るであろう。』(栄光 第七十九号 昭和二五年十一月二十二日発行)

プロジェクトに協賛し、合計1万円以上お求めの方に神社仏閣用の麻製品を調製する創業120年以上、京都・山川製の下記のオリジナル国産精麻アクセサリーをプレゼント中です。(期間延長し、2025年7月15日まで)

国産大麻(精麻)アクセサリー(京都・山川製)非売品
国産大麻(精麻)アクセサリー(京都・山川製)非売品

ある神道関連物の製作の余材がたまたまでき、それを生かすべく1つひとつ手仕事により生まれました。きなりと濃紺のツートンが特徴です。

身につけたりバッグにつけたり、神具として使用したりいただければと存じます。

 

栃木県の麻農家、酒巻幸一さん引退の記事をいま読んで思い出したこと

栃木県の麻農家、酒巻幸一さんについて書かれたこちらの記事を見つけ、いろいろ思い出しました。(安間信裕さんがSNSで2019年に酒巻さんについて紹介されており、引退のことは存じておりました)

2015年に徳島県木屋平の三木家住宅へ訪問した際、ご当主、三木信夫さんから貴重な種々お話をうかがいましたが、いい麻をつくる方と紹介いただいたのが酒巻さんでした。

いっしょにいた神社仏閣用の麻製品を調製して120年以上、京都・山川(5代目)の麻縄職人、山川正彦さんがたずねたからです。三木さんは、築400年の住宅の戸棚から1枚の写真を持ってきてくださり、別の紙片に酒巻さんの住所と電話番号を書いてくださいました。

三木さんから見せていただいた麻農家・酒巻幸一さんの写真
三木さんから見せていただいた麻農家・酒巻幸一さんの写真

その後、2016年9月29日放送のNHK「所さん!大変ですよ」の後半、(吉田)鋼太郎のちょっと大変ですよのコーナーで、麻農家として酒巻さんが紹介されたことがありました。(麻の種をまく播種機が取り上げられ、この農具のおかげで麻の生産量は飛躍的に増え日本一になったと)

しかし、化学繊維の普及や高齢化によって麻農家は激減しています。

この番組のなかで播種機を紹介する前に酒巻さんは「(こんなことになって)さみしいね」とおっしゃっていたと思います。町を繁栄に導いた播種機が空き家に放置されるようになっているからです。

こちらの記事を読んで、ご存じない方はどういうことかを知っていただきたいと思います。

 

 

・参考文献

全国350神社に奉納 栃木県鹿沼市の酒巻さん、60年にわたる麻栽培を引退(産経新聞)

純国産の大麻と絹の織物が教えてくれたもの

杼と織り途中の布

2012年の夏から2013年の末まで大麻と絹の織物を販売させていただいていました。

糸づくりもその方ご自身がされ、経糸の絹は愛媛県産の晩秋繭「あけぼの」を手びき。

緯糸の大麻は栃木県産の大麻(野州麻)を手績み。

丹念に心を込めて織り上げられていて、清らかで繊細なハリとツヤのある布だったことを思い出します。

高野さんによる手績み大麻糸
手績み大麻糸(緯糸)

この方は多摩美術大学芸術学科映像学部卒業後、23歳のとき、写真を撮るために移住した沖縄県与那国島で機織りの仕事に出会いました。

そこで、島の伝統工芸品に指定されている「与那国花織り」の技法を学び、織り子(※)になったそうです。

その後、愛媛県西予市野村町で国産繭(まゆ)からの「座繰り糸ひき」の技術を習得。

さらに、大麻の歴史に興味をもち、大麻の布を自らの手にとって感じてみたくなり、麻績みの技術を習得されました。

(※)織り子=機織りをする人。沖縄県与那国島の織物の歴史は古く、おおよそ500年。与那国町伝統工芸館では、織り子の養成により与那国織の伝統を継承するための養成活動が行われている。

 

さらにお聞きすると、麻績みは与那国島のお婆さんから習ったそう。

そして、今の「よりひめ(R)」(麻糸産み後継者養成講座)の活動が始まる前に大麻博物館(栃木県)の高安淳一さんからも麻績みを教わったそうですが、それは与那国島で教わったのとは少し違うとのこと。

大麻と絹の織物
大麻と絹の織物(左側は緯糸に藍染め大麻糸がランダムに入ったもの)

日本各地には地域によって育まれた方法、昔から代々受け継がれてきたものがあるのだと思います。

それを後世に受け継げるようにしたいですね!(間に合ううちに)

手間をかけた時間と、作り手の想いが感じられる命のかたまりのような上品で美しい布でした。