神主が祓いに用いる道具は「大麻(おおぬさ)」と呼ばれ、神事には必ず用いられます。
「大麻」は「祓(はらえ)の幣(ぬさ)」であり、今日一般的には榊の枝に麻苧(麻の茎の繊維を平らに熨したもの)と紙垂を添えて取り付け(麻苧のみの場合もある)、祭事の際は修祓行事に使用し、あるいは檜の角棒(幣串・幣棒などと称する角棒)や丸棒を串として、これに麻苧と紙垂を添えて取り付けて(麻苧のみの場合もある)筒の中に納め置いて、日常の神拝などの際に、筒から取り出して修祓に使用するものである。『家庭の祭祀事典』西牟田崇生著(国書刊行会)P108より
大麻(たいま)は神道では罪や穢れを祓う神聖な植物とされてきました。
なぜ縄文~弥生期に使用されたか
「ものを縛る」「束ねる」「吊す」「土器に縄文をつける」「釣り糸にする」「弓の弦にする」「袋の口をしめるヒモにする」「鏡や首飾り、腰飾りなどの孔に通すヒモにする」「縄帯」「衣服の腰ヒモ」「縫い糸」「編み物の材料」「舟のもやい綱」「海人の命綱」「はえ縄」「墨縄」「結縄」など、大麻は縄文~弥生期に頻繁に使用されました。なぜか?
1.繊維が強靱であること。
2.種蒔きから約90日の短期間で人間の背以上に高くまっすぐ育ち、栽培しやすいこと。
3.大麻には神々と交信し、自然のメッセージを受けるシャーマンに必要な一定の覚醒作用があると思われていること、など。大麻そのものがもつ縄文時代以来の日本人の体験による不可思議な神聖さとその呪術性ゆえです。
私たちが知るところでは、しめ縄、御札、御幣、鈴緒、狩衣、祭りの山車の引き綱、上棟式などで使用されてきた大麻。現在、神社で大麻が最重要視されているのは「神が宿る神聖な繊維」とみなされているからです。
国産大麻(精麻)の祓串
大麻(おおぬさ)は、白木の棒で作ったものは祓串(はらえぐし)とも言います。
この祓串は、紙垂と精麻がついたもの、紙垂だけのもの、精麻だけのものがありますが、さぬきいんべでは国産極上精麻だけがついた祓串をご用意。
白木の棒と置き台に木曽桧(樹齢150年以上)の柾目材を用いた京都の木工職人と麻縄職人からなる伝統工芸の粋を集めた神具です。※高さ約30センチと約75センチのものがございます。
写真は高さ約30センチのもの。
随所に示された職人の心と技、国産精麻の黄金色、木曽桧の木目の細かさ、美しさ、香りなども併せてご観賞いただければ幸いです。罪穢れや病気、災厄などを祓い清める祓具として、朝夕の神拝など、自己祓いにお使いください。(2022年、東京・戸越八幡神社様より外祭用ということで高さ約60センチの祓串をご注文、納品させていただきました)
阿波国一宮・大麻比古神社の祓串
徳島県の阿波国一宮・大麻比古神社には上の祓串、高さ約75センチ(紙垂付き)が2017年に日本麻振興会により大麻比古神社に奉納されました。(奉納時にそこにおり、拝させていただきました)
なお、同神社では拝殿に向かって右側に自己祓い用の祓串があります。(神社によってあるところ、ないところあり)
説明書きがあって、「自己祓いの作法」とあります。
1.両手で祓串を持ちます。
2.唱詞を奏上しながら自身の肩の辺りを左・右・左の順序で祓います。
3.祓串を戻し、お賽銭を納めます。
4.二礼二拍手一礼の作法で拝礼します。
唱詞「祓(はら)へ給(たま)へ 清(きよ)め給(たま)へ 守(まも)り給(たま)へ 幸(さきは)へ給(たま)へ」
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文字通り、祓い清めてお参りするんですね。
参考文献:
「日本の建国と阿波忌部」林博章著
「大麻という農作物」大麻博物館著
「檜(ひのき)」有岡利幸著(法政大学出版局)
「家庭の祭祀事典」西牟田崇生著(国書刊行会)