四国はじめ、日本各地に麻(大麻)をもたらした阿波忌部についておさらい

今後、昔の麻の産地や麻の地名が残っている箇所がクローズアップされるのではないかと思い、日本各地に麻を植え拓いていった阿波忌部(いんべ)について以下にまとめました。

忌部氏は、祖神を天太玉命(あめのふとだまのみこと)とし、古代において大和朝廷の宮廷祭祀(豊穣・平和の実現・災害・疫病防止・子孫繁栄などを祈る=マツリゴト)とあわせ、祭具(神様にお祈りするための道具)や神殿をつくる職務をつかさどった氏族でした。

そのうちの阿波忌部は、天日鷲命(あめのひわしのみこと)を祖神とし、麻や穀(かじ、楮)を植え粟国(阿波国=現在の徳島県)を開きました。阿波勢力(後の阿波忌部族)は、ヤマト王権の成立に大きな影響を与え、日本各地へ進出して産業の基盤となる麻や穀を植え、農業・養蚕・織物・製紙・建築・漁業などの技術を伝えました。阿波忌部が麻を植えた地は「麻植(おえ)郡」(現在の徳島県吉野川市)と呼ばれました。

807年の「古語拾遺」にあるように、天日鷲命の孫は、天富命(あめのとみのみこと)に率いられ海路黒潮で房総半島に到達、麻・穀を植え産業を広めました。昔は、麻を「総(ふさ)」と呼びました。よって、千葉県は総国(ふさのくに)、上総(かずさ)・下総(しもふさ)と呼ばれ、阿波忌部がいるところは故郷の阿波を偲び安房国(あわのくに)と名付け、「安房神社」が建てられました。以後、常陸国(ひたちのくに)・武蔵国(むさしのくに)・下野国(しもつけのくに)などの関東地方を拓いていきました。栃木県小山市粟宮(あわのみや)にも「安房神社」があります。東京都の浅草には酉の市で有名な「鷲神社」(おとりさま)が祀られていますが、阿波忌部の関東開拓の故事が「酉の市」の起源ともなりました。その他、伊勢・遠江・伊豆などの太平洋岸や石見・出雲などの日本海側にも進出していきました。

また、阿波忌部は天皇が即位する一世一代の儀式となる大嘗祭に大嘗宮内の悠紀殿(ゆきでん)・主基殿(すできん)の「第一の神座」に大王霊が宿る神衣(かんみそ)として奉られる「麁服(あらたえ)」と呼ぶ麻の反物(麻織物)を調進する重責を担ってきました。2019(令和元)年、今上天皇の大嘗祭がおこなわれましたが、阿波忌部直系の三木家第28代当主・三木信夫氏より調進されたのは記憶に新しいところです。

その他に阿波忌部に関わりがあり、現在もつづいている産業に、阿波藍、阿波和紙、すだち、太布があります。

なお、同じ忌部氏の一族である讃岐忌部は、手置帆負命(たおきほおいのみこと)を祖神とし、讃岐国(現在の香川県)を一番はじめに開拓しました。香川県善通寺市に鎮座する式内社、「大麻(おおさ)神社」の社伝に「神武天皇の時代、当国の忌部氏、阿波忌部と協力して讃岐を開拓し、此の地に麻を植え、殖産興業の途を開かれ、国利民福の基を進め、その祖神天太玉命を祀り、大麻天神(おおあさのあまつかみ)と奉称し、村の名を大麻と云う。」とあります。

麻の名を冠した日本の地名マップもあわせてご覧ください。

 

※阿波忌部研究の第一人者である林博章先生が、日本や世界の聖地旅行を専門とするクラブワールド株式会社(代表取締役 大村真吾氏)の主宰するYouTube動画(約59分)に出演し、「忌部」について対談形式で語られています。(今後、クラブワールド社では、剣山例大祭とあわせ、忌部山ツアーを主催する予定だそうです)

※「大麻」の名は、明治以降の外来種と区別するため。

 

 

・参考文献

「徳島と日本各地を拓いた阿波忌部」(発行:一般社団法人忌部文化研究所)

一般社団法人 忌部文化研究所ホームページ

「麻の文化を守り育てる」(野州麻栽培農家七代目 大森由久)パンフレット

 

 

なぜwebショップのキャッチコピーは「四国から始国(しこく)へ」なのか?

年頭にある方から、webショップのキャッチコピー「四国から始国(しこく)へ」とはどういうことか?と聞かれました。

さぬきいんべwebショップのバナー
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口頭でお答えさせていただいたのですが、いい質問をいただいたと思い頭を整理する意味で書いてみます。

古事記の国生み神話によると四国は淡路島の次にできた最初の国(伊予二名島)です。

四国は麻に関しても歴史が古く、代々、天皇の践祚大嘗祭に麁服(麻織物)を調進してきた阿波忌部直系・三木家、徳島県の旧麻植郡をはじめ、また大麻山が3つも存在することなど、四国は麻の国と言っていいほど、麻にまつわる歴史、地名や神社が数多く残っています。

ですので、麻の文化の再興も、四国からはじめて行く、はじまっていくという意味を込めました。(“麻の文化、織物技術の伝承を”という言葉は三木家28代当主、三木信夫さんが令和の大嘗祭前に取材を受け語ったこちらの記事からいただきました。共感しましたので)

お断りしておくと、始国というのは私が考えた言葉ではありません。はじめて聞いたのは当時住んでおりました香川県高松市で2006年にあった某講演会だったと思います。

 

ちなみに昨年後半ぐらいから日本の原点にスポットライトが当たっているように思います。(それぞれの人の原点は何かということも大切になっていると思います)

昨年ご紹介した古神道の研究をしている河野貴希さんも今年の初詣におすすめの神社について以下の淡路島の3社を挙げておられます。

1.おのころ島神社(兵庫県南あわじ市)

2.岩上神社(兵庫県淡路市)

3.伊弉諾神宮(兵庫県淡路市)

この順番のコースをたどると、“日本の原点”を肌で感じることができるそうです。(トータルヘルスデザイン発行「元気な暮らし」2022年1月号P56より)

日本の原点をたどると、必然的に「四国から始国へ」ということになっていくと思いますがいかがでしょう?

今年も1年間ありがとうございました~年末感謝祭2019

年末感謝祭2019

来年のエネルギーが世の中に入ってきて予兆を感じる頃になってきた感があります。

今年も年末感謝祭を1年間の感謝を込めてさせていただきます。

お買い上げいただいたお客様全員に、日本各地をひらいた阿波忌部についてのカラーパンフレットをプレゼント中です(お一人様1部限り、2019年12月31日まで)。

今年は元号が令和となり、ご存じの通り、新天皇即位にともなう大嘗祭(11月14~15日)に大麻の織物、麁服(あらたえ)が阿波忌部の直系である三木家(当主・三木信夫さん)より調進、愛知県豊田市で作られた絹織物「繪服(にぎたえ)」とともに供えられました。

阿波忌部のことがわかりやすくまとめられたA4全10ページのカラーパンフレットです。日本の原点を見つめ未来を創る、そういう時期にふさわしい内容と思います。(個人的にはP8の忌部の精神がおすすめ、これは2013年に今治市であった三木さんの講演の際にも拝聴した覚え)

ぜひ楽しみにお待ちください。(^^)/

あのとき三木さんからうかがったこと

2019年11月14~15日に予定されている新天皇即位後の大嘗祭(だいじょうさい)に向けて麁服(あらたえ)を調進する阿波忌部直系、三木信夫さん。

私は神社仏閣用麻製品を調製する山川(京都)の山川正彦さん(5代目)らと2015年5月24日に徳島県木屋平の三木家住宅(国の重要文化財)を訪れました。(そのときのことはこちらに書いています)

三木家住宅
入口土間から見たお座敷

そのとき、三木さんからお座敷でうかがった貴重なお話(一部)をご紹介したいと思います。

・麁服の「あら」とは、向こうが透けて見えるという意味がある。

・今上(平成)天皇の大嘗祭に調進した麁服は、群馬県岩島産の種から栽培したもの。(栃木県産の品種、トチギシロも栽培したが繊維が硬かった)

・古語拾遺は、皇室のバイブルになっていると皇室の方が言っている。なぜなら、いろいろことが細かに書かれているから。

三木家住宅
座敷の壁にかかるお額

京都から?と三木さん最初驚かれていましたが、山川さんが麻のしめ縄、鈴緒をつくる職人とわかるといい麻をつくる麻農家さんを紹介くださったり、さらに連絡先を教えてくださったりしました。

三木家住宅前(徳島県木屋平)
東宮山~天行山方面。手前は斎麻畑の跡。

「2004年に4町村合併で『麻植郡』が消滅した。これを後悔する人たちも増えている。兵庫県の篠山市が丹波篠山市への変更を問う住民投票が賛成多数で成立した例もある。麻農業が誇れる文化だと地域住民に浸透していけば、自然と地名を変えようという動きにつながってくるのではないかと期待している」(日本経済新聞記事より、三木さん)

麻の文化や織物の技術を伝承し、再興することが地域活性化につながると思うのは三木さんだけでないと思います。

 

参考文献:

・「古語拾遺」斎部広成撰、西宮一民校注(岩波書店)

・「日本の建国と阿波忌部」林博章著

大嘗祭の麁服(あらたえ)調進準備 三木信夫さん(日本経済新聞)

大嘗祭の麁服調進 徳島・山川町の山崎忌部神社氏子ら、機運盛り上げへ協議会(徳島新聞)

・国指定重要文化財三木家住宅パンフレット(美馬市・美馬市教育委員会)