国産精麻の「日本の伝統色」。草木染め各色の在庫充実へ一歩一歩

神社の鈴緒やお寺の鰐口紐(鐘緒)など神社仏閣用の麻製品の染色には、99%化学染料が使われています。

もともと人間は自然界の植物などから染料を取り出し、布を染めてきました。今も各地には草木染めをする産地があったり、作家、職人がいらっしゃったりします。

さぬきいんべでは2016年から藍染め、草木染めの精麻製品を増やしていっておりますが、このほど草木染めされた国産精麻の紫色(本藍+茜染め)、緑色(本藍+ざくろ染め)、黄色(ざくろ染め)50グラムの在庫を持つようにしました。

草木染めされた国産精麻(上より紫・緑・紫色)
草木染めされた国産精麻(上より紫・緑・紫色)

極上の国産精麻をベースに上の3色以外に下記の色(染め)が可能です。

* 赤色(茜染め)

* 紺色(本藍染め)

きなりを含め計6色です。〔緑、黄、赤、白(きなり)、紫色は五色緒、五色旗や真榊の「五色」〕

神具用途はじめ、伝統工芸、アート、手芸・アクセサリーなどお使いいただければと思います。

梅、桜、藤、桔梗、菊、紅葉。日本人は四季それぞれに移り変わる山野の植物の姿を鑑賞して楽しみ、詩や歌に詠んでその心を表わすとともに、自らの衣裳にもこうした美しい色彩を染めて楽しんできた。これが日本の伝統色である。花や樹の色を美しく染め上げるため、植物の花、葉、樹、根などのどこかに潜んでいる色素を採り出して染めてきたのである。
今からおよそ150年前、19世紀の中葉、ヨーロッパを中心に吹き荒れた産業革命の嵐は、それまでの職人衆が自らの肉体とわずかな道具を使って行なっていた仕事を、機械へと変えてしまった。染色では、それまでは植物から色を採っていたのに、石炭のコールタールから、化学的に合成する染料を発明したのである。
日本には明治時代の中頃、文明開化の名のもとにヨーロッパの産業革命の成果が怒濤のように押し寄せてきた。京の堀川の近くに軒を連ねていた染屋も同じで、またたくまに、スプーン一杯の粉で便利に染まる化学染料に変わってしまった。
日本人が飛鳥・天平の昔から江戸時代の終わりまで育んできた、日本の伝統色は失われたのである。(「自然の色を染める」吉岡幸雄・福田伝士監修(紫紅社)はじめに~より)

染めは、染め職人による手染めで、自然な色をできるだけ長くお楽しみいただけるよう濃く染めております。また扱いやすいように精麻は麻縄職人がある程度裂いております。

 

 

・参考文献

「自然の色を染める」吉岡幸雄・福田伝士監修(紫紅社)

 

精麻の鈴緒とともに。菊理媛命(くくりひめのみこと)をお祀りする京都・白山神社

1月半ば過ぎ、出張の折、京都の白山神社へお参りさせていただきました。

ご祭神の1柱が菊理媛命で、引き寄せられた感じがします。

というのも、いまよく聴いているのが昨秋コンサートを拝聴した森田梅泉さんのアルバム「くくり姫」だからです。

コンサートで、くくり姫という曲の前にこんなナレーションが流れました。「混沌とした時代にしか現れないくくり姫」と言っていたのを覚えています。

 

白山神社(京都市)の本殿
白山神社(京都市)の本殿

3年前もこの神社の前を通ったのですが、お参りはせず白山神社(白山信仰、すなわち白山比咩神社を総本社とする白山神社は各地に鎮座)がこんなところにあるというのにとどまりました。

 

境内は掃除が行き届いており、小さいながらもきれいな神社です。

本殿、末社にも精麻の鈴緒がかけられていました。

拝殿に鈴が吊されているのは、巫女が神楽鈴を振るのと同様に、参拝者自らが神を前に鈴の音で祓い清める為のものです。その鈴を鳴らす綱が「鈴緒」です。神聖なる鈴を鳴らす綱である為、古来より神聖な植物とされる麻で作られてきました。鈴緒の『緒』の文字には「魂をつなぐもの」という意味合いがあります。鈴を鳴らし、自らの魂を振るい起こす鈴緒は、まさに神仏にその魂を繋ぐものともいえるでしょう。(明治19年創業 神社仏閣用麻製品調整 株式会社山川パンフレットより)

ご案内してくださった山川様、本岡様ありがとうございました。

この後、鈴緒の六角桐枠の文字彫り職人にバッタリお会いし、私も少しお話できました。

新年(2022年)のしめ縄の準備があちこちで進行しております

新年2022年まであとわずか。

しめ縄のご感想を次々いただいております。

お客様が「お陰様で綺麗にお飾りできました。」と神棚に飾ったしめ縄の写真を送ってくださいました。

お客様からお送りいただいた写真(会社と思われます)
お客様からお送りいただいた写真(会社と思われます)

工夫してきれいに飾られていますね!この方は会社のご住所へお送りさせていただきましたので、会社の神棚と思われます。

国産精麻、牛蒡型の紙垂付きです。紙垂が付くとあらたまった感じになります。

メールでいただきました別のお客様のご感想では、「箱を開けた瞬間に、場が浄められたような感じがしました。」というのもあります。しめ縄が数本まとまって入った大きな箱です。

他にも、「初めて手に取る精麻の品々は大変神々しく日本古来の慎しやかな美しさを感じました。(中略)新しい年を気持ちよく迎えられそうです。」

「しめ縄は一年間玄関外に飾らせていただくつもりです。この日のために一生懸命玄関を掃除しました。」、「いつも最高のしめ縄ありがとうございます」などメール、SMSでお言葉をいただいております。

国産大麻(精麻)の飾り紐がついた女子神職用の釵子ができました

このほど国産精麻の飾り紐がついた釵子(さいし)ができました。

釵子とは女子神職用の正装・礼装時の髪飾りです。

通常、左右に絹の日陰糸を垂らしますが、その日陰糸と同じように、麻縄職人が国産精麻を用い細い紐を撚り、それを組みひも職人が飾り結び(あげまき結び・蜷結び)を施し仕上げております。

釵子・国産大麻(精麻)飾り紐付き
釵子・国産大麻(精麻)飾り紐付き

神社界になくてはならない存在、女子神職の声を聞きながら具現化した釵子です。

すでに釵子をお持ちの方へ飾り紐のみのご注文もお請けさせていただきます。(取り付け用の精麻を無償でお付けいたします)

飾り紐のご感想をいただきましたのでご紹介させていただきます。

—引用ここから—

釵子へ取り付けてみましたが、 取付しやすく、
白い齋服と非常に調和が取れており、より、神聖さ清浄さを感じます。
個人的には、白い紐よりも麻の方が好きです。

私は、頭と髪に麻を巻きますので、バランスもいいと思っております。

—引用ここまで—

Clubhouseにて「教えて!麻のこと」Vol.2~日本人なら知っておきたい、暮らしの中の麻~

4月3日(土)20時より、Clubhouseで「教えて!麻のこと」Vol.2~日本人なら知っておきたい、暮らしの中の麻~をテーマに、大麻糸績み職人としてご活躍中の棚橋祐美さんのお話があります。

3月4日にお話させていただいたのが好評だったようで、2回目を企画しました。

当日の流れで変わるかもしれませんが、次のようなお話をされるそうです。

・麻の分類(広義の意味での麻と、狭義の意味での麻)

・古来日本の繊維といえば、木綿以前は「アサとカラムシだった」

・大麻が各地で栽培されていた頃、日本人にとって麻は身近なものだった

・日常の中での麻仕事、素材を大切に扱う心について

棚橋さんは、福島県昭和村からむし織体験生第21期を修了されています。棚橋さんしかできないお話が聞けるものと、楽しみにしています。

麻に関心がある方、手仕事に携わっている方、興味のあるその他の皆さま、どうぞお聞きくださればと思います。

私はゲストで参加させていただきます。専門家としてご紹介くださり恐縮ですが、知っていることをお話させていただこうと思います。

よろしくお願いいたします。

※お聴きくださった方、ありがとうございます。棚橋さんのお話は、初心者にもわかりやすいようにと配慮、また実体験をまじえ思いの伝わるいいお話ではなかったかと思います。(4月6日追記)

手仕事、職人文化が栄えていくように

父は建具職人でした。

小学校の高学年くらいだったと思います。あるとき母が「建具は細かい割りに儲からないから跡は継ぐな」というようなことをぼそっと言いました。

跡を継ぎたいという強い思いがなかったのと、父は仕事に関しては何も言いませんでしたので、ときどき忙しい時に手伝ったりするくらいで、結局私はサラリーマンになりました。

晩年父は、生活様式の変化などで仕事が少なくなって、企業に就職したのは正解だったかもしれません。

しかしこちらの経緯で、おお麻(ヘンプ)に出会い、さぬきいんべを創業し、無私の心で「手仕事革命」へで書いているように、おお麻を追っているうちにだんだん手仕事、職人に縁があることがわかってきました。気がついたらそういうもの、人が目の前にいました。最初は「おお麻文化」を後世にだけしかホント考えていませんでした。

会社勤めしている時は上の人に「細かいことにこだわるな」と注意されたことがあります。(笑)

そしていろいろな作り手にお会いして話をしたり、2017年度から愛媛民芸館の評議員に就任してやっていったりする中で、特に手仕事、職人文化が栄えていくようにしていきたいと思うようになりました。

担い手の高齢化、減少が言われているように思います。伝統工芸では若い人たちもがんばっています。おお麻の農家、職人、神社を守ろうとして取り組んでいる人もいます。

残りの命をそれに傾けたいです。

 

四国唯一の民藝館、愛媛民芸館(愛媛県西条市)において下記のイベントをおこないます。

「民藝館1day meets!」

七Coffee Roaster×にじとまめ×jam room store 3店舗による1日限りのポップアップストア

開催日時:2019年6月23日(日)10~16時

場所:愛媛民芸館内1F

・七Coffee Roaster・・・テイクアウトカップにてドリップコーヒー販売

・にじとまめ・・・地域の食材を使用した天然酵母パン販売

・jam room store・・・久留米絣を使用したMONPEなど展示販売

当日は砥部焼、ひろき窯(多川ひろきさん、平成28年度および30年度日本民藝館展入選)の作品の展示即売会期間中であるのと、周桑手すき和紙の杉野陽子さんによる和紙教室も予定しています。

愛媛民芸館 1day meets!イベント(2019.6.23)フライヤー

精麻を身近に、京都・山川による国産精麻小物

2015年初頭より販売させていただいている京都・山川のミニ鈴緒、叶結びアクセサリーといった国産精麻で作られた小物。

小さいからといって手抜きなどしていない、どれも職人技が駆使された逸品です。

さらに同年、ブレスレットとネックレスをラインナップとして加えました。

 

ミニ鈴緒ミニ鈴緒《朱》

ミニ鈴緒
神社の鈴緒をミニチュア化した「ミニ鈴緒」

山川さんを紹介いただいたときに既に完成していた、神社の鈴緒をミニチュア化した「ミニ鈴緒」。これが皮切りになりました。

付いている鈴は本坪鈴といい、巫女が舞うときに使う神楽鈴と同様の本金メッキ仕上げでこちらも本格派、京都の職人によるものです。(メッキ無しと比べキレイで長持ち、また清々しい音色です)

後に、しめ縄《朱》【神居 和かざり】と同じように巫女の緋袴にヒントを得て朱色版を加えました。

 

叶結びアクセサリー

「叶結びアクセサリー」
装飾結びの1つ、叶結びが施された「叶結びアクセサリー」

「叶結び」とは、装飾結びの1つで、表は四つ目で「口」の字に見え、裏は「十」の字に見えることからそう呼ばれます。

山川さんいわくこの形は「いろいろやっている内にできた」とのことで、まさに湧き出るように生まれてきたと思われます。

アクセサリー感覚でカバンなどに付けられる方が多いかと思っていましたが意外に神棚にという方が多く感じています。

 

ブレスレット【麻の輪】ブレスレット《朱》【麻の輪】

「ブレスレット」
精麻だけでできた「ブレスレット」

提案(イメージを伝える)させていただいたらこの形ができあがってきました。

感心したのは精麻だけでできていること。留め具とかはなく、精麻だけで留める構造です。シンプルかつ美しい、太さをだんだん細くするなど技が施されています。

こちらも後に、朱色版を加えました。

【麻の輪】の名前はお客様から公募させていただきました。“麻(ヘンプ)でつながる輪、みんなの和”を意味しています。

 

ネックレス【麻統~あさすまる~】

「ネックレス」
精麻だけでできた「ネックレス」

こちらネックレスも、提案(イメージを伝える)させていただきました。ブレスレットと同じで精麻だけでできています。

使う人の立場に立って、首元に直接触れることを想定し、肌にやさしくなるように三本撚りして配慮、さらに特殊加工をしています。(敏感な方は服の上から着けられるなど工夫することをオススメいたします)

シンプルな構造で長さ調節ができ、チョーカー、アンクレットにもなります(そういう使い方されるお客様あり)。

【麻統(あさすまる)】の名前は、これもお客様から公募させていただきました。その方いわく、古語で首飾りを表す言葉を調べると「御統(みすまる)」という言葉に当たったそう。集まって1つとなる意の「すまる」と麻を合わせた造語が「麻統」です。

 

三本撚り叶結びアクセサリー【神結 和むすび】

「叶結びアクセサリー」
三本撚りの「叶結びアクセサリー」

上の赤色の叶結びアクセサリーは二本撚り、こちらは三本撚りです。だいぶん印象が違うでしょう?大きさも5割ほど大きいです。

こちらは生成りのみです。

【神結 和むすび】の名前もお客様から公募したものを採用、「かみゅう わむすび」と読み、“神様といつも繋がっています”という意味が込められています。

 

しめ縄【神居 和かざり】

しめ縄【神居 和かざり】
国産精麻の輪飾りの先駆者

上記の叶結びアクセサリーの販売開始後、山川さんと話しているうちに誕生した輪飾り(誕生ストーリーはこちら)。

お客様から公募させていただいた【神居 和かざり】の名前は、「かむい わかざり」 と読み、“神さまのやどる輪飾り”という想いが込められています。奇しくも後に新元号は令和となり、令和の和かざりと呼んでいただきたいです。

 

しめ縄《朱》【神居 和かざり】

しめ縄《朱》【神居 和かざり】
巫女の緋袴をイメージした朱色版

生成りの【神居 和かざり】に色を入れてみたらということで、工房を訪れ職人の意見を参考にしつつ何色にするか検討し、朱色をチョイス。また、色とのバランスを考え、前垂れはなしにしました。さらに現代風のしめ縄に。

 

しめ縄《藍》【神居 和かざり】

しめ縄《藍》【神居 和かざり】
2020東京オリンピックのエンブレムの色を意識した藍色版

山川さんと初対面した際、精麻の藍染めについて問われそれについて研究、試し染めなどする中、藍染めの製品をと思っていて【神居 和かざり】誕生より1年以上経って作っていただきました。ジャパンブルーで落ち着いた雰囲気に。この藍色版で、2020東京オリンピックの公式エンブレムのコンセプトと同様、「多様性と調和」、「つながる世界」をイメージしていただけたら幸いです。

 

ミドル鈴緒

ミドル鈴緒(朱)と(生成り)
小さなお社、祠用に、ミドル鈴緒(朱)と(生成り)

神社の鈴緒と上のミニ鈴緒との中間で「ミドル鈴緒」と職人が命名、そのままの名前を採用しております。ご家庭や会社の神殿(神棚)、小さなお社用の鈴緒です。付属の綿ロープ(白色)でくくりつけて使う仕様で、振るとミニ鈴緒よりも大きな本坪鈴からより深みのある涼やかな音が。日々の祈り、手を合わせる際にご活用いただきたい神具です。

 

京都府指定「京の伝統工芸品」
京都府指定「京の伝統工芸品」

 

以上の製品は、いずれも京都府指定「京の伝統工芸品」です。

※製作にあたって、職人にイメージを伝えるのみにしています(作る人の個性、良さがあるのでできるだけそれを生かすために)。

一般の人がほとんど馴染みのない精麻を身近に感じていただきたいという心、職人の思いで、神社仏閣用の麻製品調製、作業の合間で作ってくださってます。

古神道(伯家神道)の作法により潔斎してお送りさせていただきます。

無私の心で「手仕事革命」へ

今までいろいろなもの作りに携わっている方、職人、作家に会い、できることなら作業場へ足を運んで見せていただきました。

布(織物)、麻縄、勾玉、木工(建具)、染色、藍染め、陶磁器、吹きガラス、張り子、、

どの方もそれが好きというのが伝わってきます。夢中になれるものがあるというのはいいといつも思います。^^

工房織座(愛媛県今治市)
工房織座(愛媛県今治市)武田正利さん(布)

倉敷ガラスの小谷眞三さんはお会いしたことはありませんが、倉敷民藝館の初代館長であった外村吉之助さんが説いた「健康で、無駄がなく、真面目で、いばらない」、この言葉に忠実にと思いをはせ(それでも叱られたそう)、いまもそれは息子の栄次さんへ受け継がれています。

 

前に書いた美の基準にも共通しますが、ものを見ればそれがどういう風な心で作っているかわかる気がします。

個性を表現することばかり意識して作られたもの、利益ばかりを優先して作られたもの、大量生産を優先して作られたもの、、(そこには使い手の立場に立つという誠実さは感じられません)

伊予木工(愛媛県西条市)
伊予木工(愛媛県西条市)伊藤信之さん(建具、木工芸)

「無になると上から降りてくる」って言いますよね(言いませんか?)。それと同じことが手仕事におけるもの作りでも言えると思います。

(無になって)湧き出るように生まれたものは必然的に「無私の美」が宿るように思うのです。

「ほんとうの瞑想は、手を使って働くことです」という人もいらっしゃいます。

株式会社山川(京都府京都市)
株式会社山川(京都府京都市)山川正彦さん(麻縄)

また、神は細部に宿るとも言います。これもそうだと思います。見えるところだけでなく見えないところも大切にする心を感じることもありました。

そして、値段が安くても高くても同じグレードのものを作る。(安いからといって手を抜いたりしていない)

天の川工房(高知県高岡郡)
天の川工房(高知県高岡郡)宮崎朝子さん(布)

さぬきいんべでは無私の心でできたもの、使って喜ばれるもの、そういったものを扱いたいと思っています。平成はもう終わりですから、令和の「手仕事革命」を起こしたいですね!

(前略)物作り達は幸いなことに自然の材料という精霊が宿る世界を友として駆使し作業しているわけです。日夜精霊たちと会話ができるではないですか、彼らが悲しまないように仕事しなきゃならないと思いますよね。そういうことが満ちているから作るのがたのしいのでしょう。(後略)(「民藝2019年2月号」特集 平成三十年度日本民藝館展 審査委員 佐藤仟朗講評より)

 

四国唯一の民藝館、愛媛民芸館(愛媛県西条市)1階において下記のイベントをおこないます。

「民藝館1day meets!」

七Coffee Roaster×にじとまめ×jam room store 3店舗による1日限りのポップアップストア

開催日時:2019年6月23日(日)10~16時

場所:愛媛民芸館内1F

・七Coffee Roaster・・・テイクアウトカップにてドリップコーヒー販売

・にじとまめ・・・地域の食材を使用した天然酵母パン販売

・jam room store・・・久留米絣を使用したMONPEなど展示販売

当日は砥部焼、ひろき窯(多川ひろきさん、平成28年度および30年度日本民藝館展入選)の作品の展示即売会期間中であるのと、周桑和紙の杉野陽子さんによる和紙教室も予定しています。

愛媛民芸館 1day meets!イベント(2019.6.23)フライヤー

 

 

参考文献:

「SILTA38号」(手仕事フォーラム)

「山陽民藝275号」(岡山県民藝協会)

「NHK趣味どきっ!私の好きな民藝」(NHK出版)

京都の木工職人と麻縄職人による国産精麻がついた祓串(大麻)にて祓う術

神主が祓いに用いる道具は「大麻(おおぬさ)」と呼ばれ、神事には必ず用いられます。

「大麻」は「祓(はらえ)の幣(ぬさ)」であり、今日一般的には榊の枝に麻苧(麻の茎の繊維を平らに熨したもの)と紙垂を添えて取り付け(麻苧のみの場合もある)、祭事の際は修祓行事に使用し、あるいは檜の角棒(幣串・幣棒などと称する角棒)や丸棒を串として、これに麻苧と紙垂を添えて取り付けて(麻苧のみの場合もある)筒の中に納め置いて、日常の神拝などの際に、筒から取り出して修祓に使用するものである。『家庭の祭祀事典』西牟田崇生著(国書刊行会)P108より

大麻(たいま)は神道では罪や穢れを祓う神聖な植物とされてきました。

なぜ縄文~弥生期に使用されたか

「ものを縛る」「束ねる」「吊す」「土器に縄文をつける」「釣り糸にする」「弓の弦にする」「袋の口をしめるヒモにする」「鏡や首飾り、腰飾りなどの孔に通すヒモにする」「縄帯」「衣服の腰ヒモ」「縫い糸」「編み物の材料」「舟のもやい綱」「海人の命綱」「はえ縄」「墨縄」「結縄」など、大麻は縄文~弥生期に頻繁に使用されました。なぜか?

1.繊維が強靱であること。

2.種蒔きから約90日の短期間で人間の背以上に高くまっすぐ育ち、栽培しやすいこと。

3.大麻には神々と交信し、自然のメッセージを受けるシャーマンに必要な一定の覚醒作用があると思われていること、など。大麻そのものがもつ縄文時代以来の日本人の体験による不可思議な神聖さとその呪術性ゆえです。

私たちが知るところでは、しめ縄、御札、御幣、鈴緒、狩衣、祭りの山車の引き綱、上棟式などで使用されてきた大麻。現在、神社で大麻が最重要視されているのは「神が宿る神聖な繊維」とみなされているからです。

国産大麻(精麻)の祓串

大麻(おおぬさ)は、白木の棒で作ったものは祓串(はらえぐし)とも言います。

この祓串は、紙垂と精麻がついたもの、紙垂だけのもの、精麻だけのものがありますが、さぬきいんべでは国産極上精麻だけがついた祓串をご用意。

白木の棒と置き台に木曽桧(樹齢150年以上)の柾目材を用いた京都の木工職人と麻縄職人からなる伝統工芸の粋を集めた神具です。※高さ約30センチと約75センチのものがございます。

写真は高さ約30センチのもの。

国産大麻(精麻)・祓串
国産大麻(精麻)・祓串【たまきよら】

 

こちらは紙垂付き。
こちらは紙垂付き。

随所に示された職人の心と技、国産精麻の黄金色、木曽桧の木目の細かさ、美しさ、香りなども併せてご観賞いただければ幸いです。罪穢れや病気、災厄などを祓い清める祓具として、朝夕の神拝など、自己祓いにお使いください。(2022年、東京・戸越八幡神社様より外祭用ということで高さ約60センチの祓串をご注文、納品させていただきました)

 

阿波国一宮・大麻比古神社の祓串

徳島県の阿波国一宮・大麻比古神社には上の祓串、高さ約75センチ(紙垂付き)が2017年に日本麻振興会により大麻比古神社に奉納されました。(奉納時にそこにおり、拝させていただきました)

なお、同神社では拝殿に向かって右側に自己祓い用の祓串があります。(神社によってあるところ、ないところあり)

大麻比古神社の祓串
大麻比古神社の紙垂と精麻からなる祓串

説明書きがあって、「自己祓いの作法」とあります。

1.両手で祓串を持ちます。

2.唱詞を奏上しながら自身の肩の辺りを左・右・左の順序で祓います。

3.祓串を戻し、お賽銭を納めます。

4.二礼二拍手一礼の作法で拝礼します。

唱詞「祓(はら)へ給(たま)へ 清(きよ)め給(たま)へ 守(まも)り給(たま)へ 幸(さきは)へ給(たま)へ」

文字通り、祓い清めてお参りするんですね。

 

 

参考文献:

「日本の建国と阿波忌部」林博章著

「大麻という農作物」大麻博物館著

「檜(ひのき)」有岡利幸著(法政大学出版局)

「家庭の祭祀事典」西牟田崇生著(国書刊行会)

国産大麻(精麻)しめ縄に牛蒡型が仲間入り!しめ縄はなぜ左綯いなのか

このたび、国産大麻(精麻)・しめ縄に牛蒡(ごぼう)型が仲間入りしました。

従来の取扱いは中央部が太くなった「大根型」、縄を丸めたわかざり(神居 和かざり)だけでした。牛蒡型は一方がだんだん細くなる形状です。

しめ縄の種類

しめ縄の種類
種類 形状・用途
大根型 中央部が太くなったしめ縄。両端が細くなっている。
牛蒡型 しめ縄の一方が細くなってだんだん太くなっている。
わかざり 綯った縄を丸めたもの。水回りや勝手口に飾ることが多いが、汎用性が高いため屋内外のさまざまな場所に用いる。

 

国産大麻(精麻)・しめ縄【大根型】
大根型

国産大麻(精麻)・しめ縄【牛蒡型】

牛蒡型

国産大麻(精麻)・しめ縄【神居 和かざり】
わかざり

どれも国産精麻を材料に、神社仏閣用の麻製品を調製する京都の職人が綯った美しいしめ縄。明治19年創業の老舗、株式会社山川の製品です。

しめ縄の起源

日本におけるしめ縄の古語は「尻久米縄(しりくめなわ)」で、天照大御神が岩屋から出てきたさいに、布刀玉命(ふとだまのみこと)が入口に尻久米縄を張って、天照大御神が再び岩屋に戻ることのないようにしたと『古事記』の神話にみられます。

しめ縄は精麻、稲わら、マコモなど天然素材から作られます。

しめ縄を七五三縄と表記するのは、七五三という言葉が昔から縁起のよい数字とされていたからです。また、しめ縄のことを、ほかに一五三、棒縄、〆縄、締縄、標縄などとも表記します。

しめ縄はなぜ左綯いか

縄を綯(な)う方法には「右綯い」と「左綯い」があります。※繊維をより合わせることを綯うといいます。

昔は一般に、普段の生活で使用する日用品の縄は右綯い、神事に用いるしめ縄は左綯いとされました。しめ縄は神聖なものであるため、日常に使う縄とは区別する意図があったようです。

もともと日本では「左=聖、右=俗」とする考え方があります。伯家神道では右手を神様の手(左手)でしっかり握りおさえて印を組むこと(唯一の印といいます)や、神道祭式において祭祀を行う祭場(斎場)の上位下位が神座を最上位に正中・左(神座から見て)・右の順となること、拍手の作法は両手を合わせた後、右手をやや左手より引いて手を拍つことなど。

国産大麻(精麻)・しめ縄【牛蒡型】紙垂付き
牛蒡型(紙垂付き)
国産大麻(精麻)・しめ縄【鼓胴型】紙垂付き
鼓胴型(紙垂付き)

わがくには神のすゑなり神まつる昔のてぶりわするなよゆめ(明治天皇御製)

また精霊を迎える盆踊りが左回りであること、死者の着物を左前にすることはご存じと思います。能楽にも「左右」という型があり、まず左を祓って、次に右を祓うようです。

飾り方について

一般的に牛蒡型や大根型を飾るときは神棚に向かって右側にモト(太い方)がくるように取り付けます。

それは神様から見たときに向かって左にモトがくるようにするためです。

 

 

参考文献:

「神道祭式の基礎作法」沼部春友著(みそぎ文化会)
「決定版 知れば知るほど面白い!神道の本」三橋健著(西東社)
「しめ飾り」森須磨子著(工作舎)