すべてが祓い清められる日本古来の儀礼、宮中の6月30日大祓のお祓い式

6月30日、宮中の大祓(おおはらい)のお祓い式がおこなわれます。

御所でおこなわれる「節折(よおり、竹枝でおこなわれるお祓いの行事)」、また、神嘉殿(しんかでん)前庭で執り行われる「大祓(皇族はじめ、国民のためにおこなわれるお祓いの行事)」の御儀は、掌典長はじめ掌典職のお方がご奉仕にておこなわれ、これは昔ながらの尊いお祓いの御儀だそうです。

午後3時から神嘉殿前庭でおこなわれる大祓の儀式の中で、行事が進み、掌典がひたすらに大祓の大祓詞を奏上される様子を、元内掌典・髙谷朝子さんは「(内掌典はこの大祓には関係ございませんが)朗々とされましたお声が御拝廊下まで聞こえうかがいます時、自ずから身の清められます思いがいっぱいになりますほどに心の底に響き渡りましてございます。」と語っておられます。

そして、参列のお方のお祓いを終えて後、神嘉殿の広い前庭の静寂の中で掌典補がそれぞれにお祓いの御物を捧持して、一列に同じ間隔を置いて進み、神嘉門に向けて退出されます。

 

なお、氏神神社の夏越祓(なごせ)は、毎年旧暦6月16日におこなわれ、今年は7月10日です。人形(形代)でもって身体をぬぐい息を三度吹きかけ、茅の輪をくぐって、ご神前の祓箱に納めます。(ご神前では罪けがれを祓う神事をおこない、人形は祓物とともに大祓詞にある川より海へ流しやる習わしです)

※夏越の祓いは、神社によって日時が異なります。

水無月の 夏越しの祓ひ する人は 千歳のいのち 延ぶといふなり

 

・参考文献

「皇室の祭祀と生きて」髙谷朝子著(河出書房新社)

うぶすながみ(産土神)と、日本人がお土産を買って帰る意味とは

氏神神社とは、自らが居住する地域の氏神様をお祀りする神社であり、この神社の鎮座する周辺の一定地域に居住する人々を氏子(うじこ)と称します。

元来は、文字通り氏姓を同じくする氏族の間で、自らの祖神(親神)や、氏族に縁の深い神様を氏神と称して祀ったことに由来し、この血縁的集団を氏子と呼んでいました。

現在のような地縁的な関係を指しては、生まれた土地を守護する産土神(うぶすながみ)と同じ産土神を祀っている人を指す産子(うぶこ)という呼称がありますが、地縁的関係についても、次第に氏神・氏子という呼び方が混同して用いられるようになりました。

 

ここで、産土神とお土産の関係について興味深い記述がありますのでご紹介させていただきます。

贈り物の中でも、独特なのがお土産です。ちょっとした旅行でも、お土産を、あれこれ買ってしまいませんか。自分のためのお土産もありましょう。家族や友達、さらに職場やらご近所まで、お土産を買うのに大忙し、というのは日本人の癖といってよいでしょう。なぜこれほど日本人は、お土産好きなのでしょう。

「みやげ」の語源ははっきりしません。土産という文字をあてるようになるのは中世以降とされていて、そもそも別の言葉です。土産は中国から来た熟語で、その土地の産物の意味で、両者が結ばれて今日のお土産になりました。ですから旅行が一般化して、旅行先の土地の特産品を家に持ち帰るようになった、十六世紀にできた言葉です。

ところで土産の文字をひっくり返すと産土になります。うぶすながみ(産土神)のことです。産土はあらゆる生命を生み出す霊力であり、守り神ですから、一族の神ということであれば氏神ですし、その土地の守り神ということであれば鎮守の神です。産という文字通りお産の神様。妊婦と新生児をお守りする神様です。中国語の土産には産土の意味はありませんが、日本のお土産には産土の気持ちが込められていて、訪れた土地の神の霊力を一緒に持ち帰ってくるところに、お土産の意味があるのではないか、と考えられます。

西国三十三ヵ所とか四国八十八ヵ所といった巡拝は仏教の信仰に基づきます。しかしこれも各地の産土神を巡拝し、その霊力を頂いて、心身堅固に過ごしたいという民間信仰が背後にありましょう。しかしそれはあまりにも自利にこだわり過ぎです。利他行も必要で、各土地の産土神の力を持ち帰り、お裾分けして、皆が元気になるように、日本人はお土産をたくさん買って帰って配るのです。〔「楽苑80号」(SHUMEI PRESS)熊倉功夫『時と共にうつろう日本文化』第十話より

産土神とお土産、このように考えたことはありませんでした。氏神様および産土神、そしてお土産を買って帰る意味、大切にしたい日本の文化だと思いませんか?

 

 

・参考文献

「神道いろは」神社本庁教学研究所監修(神社新報社)

「楽苑80号」(SHUMEI PRESS)