現代の精麻活用の事例の1つ、木綿鬘(ゆうかずら)・木綿襷(ゆうだすき)

「木綿(ゆう)」とはコットンのことではなく、クワ科の楮や穀(かじ)の繊維のことです。

この木綿は古くより、大麻と同じく神聖な繊維とされ、その神性をもってケガレを祓うのに用いられました。

古事記の「天石屋戸」条には、「下枝に白和幣(しらにぎて)・青和幣(あおにぎて)を取り垂でて、この種々の物は、布刀玉命(ふとだまのみこと)・太御幣(ふとみてぐら)と取り持ちて~」とあり、この白和幣が「木綿」で、青和幣が大麻布のことです。

また、日本書記には「木綿手繦(ゆうだすき)」として登場します。(古くから神事で襷(たすき)を用いていたことは埴輪の巫女が襷を掛けていることでもわかります)

木綿は冠の鉢巻きにしたり、女性ならば頭に直接巻く「木綿鬘(ゆうかずら)」はさまざまな神事に用いられました。また、袍(ほう、束帯の上着)の上に斜めに襷掛けするのが「木綿襷(ゆうだすき)」です。

大嘗祭では役職により、木綿鬘だけであったり、木綿襷(ゆうだすき)と日陰鬘(ひかげのかずら)を組み合わせて使うなど、さまざまな形式があったようです。

その他、神社の本殿を改築するときなどに行われる「遷座祭」において、神職が衣冠の上に「明衣(みょうえ、神事の際に着る浄衣)」を重ね、冠には木綿鬘、明衣には木綿襷を掛けて神事を行います。

本来、「木綿」と「麻」は明確に区別されており、『延喜式』に「安芸木綿」とあり、木綿の主産地は安芸国(広島県)などであったと思われます。

しかしやがて本物の木綿の調達が難しくなり、江戸時代には麻の繊維や細布で代用していました。現代では「麻苧(精麻)」と呼ばれる大麻の繊維を利用することが多いです。

明衣(みょうえ)の上に木綿鬘と木綿襷をつけた姿
明衣の上に木綿鬘と木綿襷をつけた姿

 

 

・参考文献

「有職装束大全」八條忠基著(平凡社)

「日本の建国と阿波忌部」林博章著