なぜ、お盆の迎え火や送り火、精霊馬にオガラがつかわれるか

お盆(盂蘭盆会)が近づくと、スーパーなどでオガラ(麻幹)が売られているのを見かけませんか?

オガラは、お盆の際、迎え火と送り火の松明(たいまつ)としてオガラを用いる他、ナスやキュウリで作った精霊馬の足に使用します。

オガラとは、皮をはいだ大麻(アサ)の木質部です。

なぜ、これらの用途にオガラが使われるかというと、大麻は昔から清浄なものとして扱われており、場の穢(けが)れを取り除くといわれているからです。

「オガラの煙に乗ってご先祖様が帰ってくる」という言い伝えが残っている地域もあり、あの世から迷わずに里帰りできるようにという願いを込め、ご先祖様の霊を迎え入れる場所の目印として燃やされてきたのです。

一方、同じように愛媛県八幡浜市の五反田地区で毎年8月14日夜におこなわれる「五反田柱まつり」(県指定無形民俗文化財)でも松明としてオガラが使用されます。〔松明は中心の心棒の周りにオガラ(地元では麻木という)を留めて作成します〕

 

五反田柱まつりの歴史

約400年前、戦国時代に八幡浜市内の元城主(現・五反田)と萩森城主(現・大平)との合戦が起こりました。その際、元城主の客分で修験者の金剛院円海は、松明をもって元城に助けに入ろうとしましたが、味方に敵と間違えられ射られてしまったそうです。

その後、五反田地域に疫病がまん延した際に、「これは悲惨な最期を迎えた円海の祟りである」とされ、金剛院の鎮魂供養のためはじめられたとされます。(※諸説あります。広報誌「やわたはま」2022年9月号より)

 

八幡浜五反田柱まつり(8月14日)ポスター
八幡浜五反田柱まつり(8月14日)ポスター

なお、2007年ごろまでお隣の大洲市で麻の栽培がこの伝統行事、五反田柱まつり用のオガラのためにされていたのを再度、地元産のオガラでと2024年より動きはじめ、保存会の会長、堀内稔さんの賛同をすでに得ています。

 

お盆は、昔から神聖な行事として扱われてきました。地域によって日程や風習はちがいますが、ご先祖様を供養し、敬う気持ちで過ごすことは共通していると思います。

アラソと精麻のちがいについて。同じ植物から生まれる2つの繊維

アラソ(皮麻)と精麻のちがいについて書いてみます。

アラソ精麻は、同じ植物が元でありながら、不思議なくらいその見た目や感じるものがちがい、加工の段階と用途が異なります。

アラソは、大麻のエネルギーそのもの、人の手がはいりすぎていない分、自然の根源的な力を感じる方が多いのではないでしょうか。(感じ方に個人差があると思います)

古い時代や地域によっては、「麻そのものの霊力」を重んじ、祓いや結界につかわれたようです。現代ではタタミの縦糸、久留米絣(国指定無形文化財)の糸を防染のため手くくりする際などにつかわれています。

精製される前の繊維、アラソ
精製される前の繊維、アラソ

対して精麻は、神様の宿る神聖な繊維、神の依り代といわれ、現在の神社祭式では祓い清めに用いられます。(お客様の1人は、アラソは原石や隕石のような麻そのもの、生命そのもののパワフルな感じ、精麻は磨かれたクリスタルのような曇りのない純粋なエネルギーと表現されています)

 

「JOMON(縄文)」を世界語にした縄文研究の第一人者で、國學院大學名誉教授だった故・小林達雄先生(1937~2025年)は、王冠型土器と火焔型土器(これらの土器は2つで1つ)のように、縄文人には「2つで1つ」という哲学があり、その哲学思想が縄文以降もつづいているとおっしゃっています。

これは、「陰陽」は大陸から渡ってきたといわれていますが、陰陽道自体、日本が起源ということです。

たとえば、伊勢神宮であれば、内宮と外宮、あるいは正宮と荒祭宮(あらまつりのみや)というように。狛犬もそうですし、風神雷神などもそうです。

同じように、アラソと精麻は、同じ大麻という植物のなかで、別の側面をもつ「2つで1つ」の繊維ではないでしょうか。

目的に合わせて使い分けるといいと思います。

 

 

・参考文献

「地域資源を活かす 生活工芸双書 大麻あさ」倉井耕一・赤星栄志・篠﨑茂雄・平野哲也・大森芳紀・橋本智著(農山漁村文化協会)

「元気アップ通信」2025年9月号(トータルヘルスデザイン)