草木染めの精麻を業界標準にという夢

2015年に、神社仏閣用のしめ縄や鈴緒、鰐口紐など麻製品を調製する京都・山川と知り合い、製品を取り扱いはじめて、えっ?と思ったことの1つが、精麻を染色する際に用いるのが化学染料であることでした。

創業以来、さぬきいんべではヘンプ衣料を主に、草木染めの製品を取り扱ってきていたからです。それ以前に古神道がベースにあるので自然順応的な考えはごく普通にあります。

なぜ化学染料が使われるかというと価格が理由とのことです。白い精麻が尊ばれる、精麻の漂白とは理由は異なります。

そんな中、山川の製品を扱いはじめてまず藍染めの製品を2016年に投入、それが神居 和かざりの藍染め版です〔京都・祇園祭の山鉾に藍染めされた精麻が用いられる、それにヒントを得ました。先人の知恵と思います。(参考)京都に夏を告げる祭り「祇園祭」〕。

このたび、待望の草木染めの製品、神楽鈴・国産精麻五色緒付きを取り扱い可能になりました。2尺5寸(約75センチ)の五色の精麻の緒を草木染めの五色で対応いたしました。

草木染めとは現代のように化学染料がなかった時代の染色方法です。

「草木は人間と同じく自然より創り出された生物である。染料となる草木は自分の命を人間のために捧げ、色彩となって、人間を悪霊より守ってくれるのであるから、愛(なさけ)をもって取扱い、感謝と木霊(こだま)への祈りをもって染の業に専心すること」-古代の染師の間に語り伝えられた「染色の口伝」の一節である(前田雨城著『日本古代の色彩と染』)。

古代の人々は強い木霊の宿る草木を薬草として用い、その薬草で染めた衣服をまとって、悪霊から身を守りました。まず火に誠を尽くし、よい土、よい金気、素直な水をもって、命ある美しい色を染めました。

いずれも天地の根源より色の命をいただいたというわけです。

化学染料による染色にはない、素朴さ、色の深み、質感、、

化学染料は色と色を混ぜ合わせることによって新しい色を作ります。単一の色では色に底がありません。また化学染料は脱色することができますが、植物染料は脱色することができません。

人間が主か、自然が主か、、

神様(仏様)に自然の循環型のものを捧げさせていただく、またサステナブル、持続可能な社会にという流れの中、神社仏閣の麻製品でも草木染めが標準になっていったらいいと思わずにはいられません。(^^)/

山門にかけられた国産精麻しめ縄と草木染め垂れ(四国霊場22番札所・平等寺)
山門にかけられた国産精麻しめ縄と草木染め垂れ(四国霊場22番札所・平等寺、2017年)

 

・参考文献

「色を奏でる」志村ふくみ・文、井上隆雄・写真(ちくま文庫)

「函谷鉾(財団法人設立三十周年記念)」財団法人函谷鉾保存会編

10周年を迎えて新たなスタートを

2020年1月4日で、さぬきいんべは10周年を迎えました。

10年か、、1月はその余韻にひたっていたようなところがあります。10年前に思いをはせたり、これまでにあったこと、人との出会いなどを思ったり、その中で新しいことを考えたり、、

いまの思いを書いてみます。

さぬきいんべは10年前の2010年1月4日にこちらに書いていますような経緯で大麻文化の復興にお役に立ちたいと思い、いわゆる“お金なしコネなし経験なし”から香川県商工会の創業塾、下記のH社でのインターンシップを経て香川県高松市で創業いたしました。創業前から注文をいただきいいスタートに見えましたが半年余りで活動中止へ。同年8月に実家のある愛媛県西条市にUターンしそのまま辞めてしまうことも考えました。しかし周りの後押しもあって翌年6月に活動再開、現在に至っております。

最初は今は製造中止になっていますがH社が開発した工房織座(今治市)製のヘンプ衣料をOEM供給を受け、さぬきいんべ(TM)ブランドでの販売を中心にしておりました。

H社は2014年に事業停止、それと前後して京都の麻縄職人(株式会社山川)を紹介いただき、神社の鈴緒をミニチュア化したミニ鈴緒を皮切りに今までさまざまな製品を取扱い好評を得てまいりました。

一番うれしかったのは、2016年に山川の製品を結婚式の引き出物等に選んでいただいたことです。引き出物の1つとして叶結びアクセサリーが贈られたり、披露宴にてプリザーブドフラワーでおめかししたしめ縄(神居和かざり《朱》)が飾られたりご両家に記念品として神居和かざり《朱》が贈られたとのことでとても感動しました。(お客様より式の模様の写真をあとで見せていただき、和にこだわられている様子にとても感激いたしました)

結婚式で使われた神居和かざり《朱》
結婚式で使われた神居和かざり《朱》
(同)結婚式で使われた神居和かざり《朱》、ご両親に記念品として
(同)結婚式で使われた神居和かざり《朱》、ご両親に記念品として

最初は意識していませんでしたが年々手仕事、職人と縁が増えていき、株式会社山川との出会いで自分のルーツが職人なんだと思いました。それがはっきりわかった後、建具職人だった父が2015年春に亡くなったのも不思議なめぐり合わせだったと思います。

今後もより一層研鑽を積み世に無い製品、特に手仕事のものを出していきたい、さらなるサービス向上に努めたいと思っております。そして、ある時気づくと「初心」が叶っていたが理想です。〔目標としては1939(昭和14)年の栽培面積、特に四国。「大麻という農作物」(大麻博物館著)によると四国は愛媛7.5ha、高知7.1ha、香川0.1ha(徳島はデータなし)、他の地域では例えば、栃木4158.2ha、長野1013.3ha、広島688.5ha、北海道112.9haなど〕

よろしくお願いいたします。

PS 2020年庚子(かのえね)の年は、アップデート、更新といった意味があるのをあとで知りました。

 

 

・参考文献

「大麻という農作物」大麻博物館著(大麻博物館)

四国霊場22番札所・平等寺で初会式(麻レポート)

1月19日、徳島県阿南市の四国霊場22番札所・平等寺の初会式に行ってきました。

山門にかけられた国産精麻のしめ縄を見に行ったのが2016年3月(こちらの記事)。以来、4年ぶり。

本堂での晋山式法会
本堂での晋山式法会〔左に新品の鰐(わに)口紐、住職の左肩には修多羅〕

この日は本堂で晋山式(新住職就任)法会も行われ、それに参列させていただきました。仏教は詳しくないのであれですが椅子席には「先達」の方がずらっと並ばれているようでした。

初会式に合わせて本堂の鰐口紐2本、鐘楼の鐘突き紐(いずれも国産精麻製)が新しく付けられていて文字通り新品でした。

この初会式は、谷口真梁(しんりょう)住職が副住職だった頃に大勢の稚児や参拝客であふれかえった昭和初期の初会式の写真を見て感動し、2016年に再興。今回が再興5回目。門前や境内では仮装マルシェ、太師堂横のステージで太鼓、阿波踊り、ヴァイオリンコンサート、そして餅投げ(3回!)もあり多くの人でにぎわっていました。

太師堂横のステージで太鼓演奏中
太師堂横のステージで太鼓演奏中

そう、このステージで五色の綱引き大会もあって、この綱がまた麻製なんです。

住職の左肩にかかっていた立派な修多羅(国産精麻製)も遠目に見させていただきました。

さぬきいんべに至る前、私は弘法大師・空海の足跡を追いかけていたことを思い出します。御厨人窟、出釈迦寺(我拝師山)、焼山寺(焼山寺山)、太龍寺、大滝山、高越山、高野山、、

平等寺は空海が開いたお寺で、「弘法の霊水」(井戸)もあり、ご本尊の薬師如来は空海の御作(秘仏)です。さぬきいんべは1月4日に10周年を迎えましたが、再び訪れて今までのことを思いかえし、ご縁をあらためて感じました。

麻というと神社ばかりでなくお寺でも麻が使われています。鰐口(下から見て鰐が口を開けたように見えることからこう呼ばれる)は参拝者が綱を振って打ち鳴らすことで神仏に来意を伝えます。お寺にお参りした際、見てみてください。

 

 

・参考文献

徳島新聞「徳島・阿南市の22番札所・平等寺 50年ぶり初会式」

数霊で解く大麻(ヘンプ)

2020(令和2)年、今年もよろしくお願いいたします。年始に自治会の“お日待ち”という集まりの用で各家を回りましたら、皆さん新年らしいいいお顔をされててうれしく思いました。

さて、数霊とは、日本の神道において言霊と表裏一体とされているもので、数に宿る霊のこと、数にも言葉と同じように魂があるのです。

言霊は上古代の頃から必ず数霊という数に裏打ちされたものだったようです。(父のことを「カゾ」、母のことを「イロハ」と言うんです。父親は縦の系統の数霊、母親は横の系統の言葉、つまり経糸が数霊、横糸が言葉)

古くから神道に受け継がれてきた数霊のことは、熱田神宮や大神神社などで奉職された小林美元さん(1927~2005年)の『古神道入門』にも記述があります。

ここでは吉野信子さんによるカタカムナ48声音の思念(言霊)表を用いて大麻(ヘンプ)を解いてみたいと思います。(神道の数霊とカタカムナ数霊の関係は吉野さんの著書で解かれていますので興味のある方はそちらをお読みいただければと思います)

それでははじめましょう。

おおあさ=40+40+18+28=126 根源から出て分かれ放射する。

ヘンプ=22+48+2=72 調和の振動が放射する。

言霊ではどちらも成長が早い、生命力が強いことを表していると思いますが、日本語(おおあさ)は、内面(見えないもの)に着目した感じ、英語(ヘンプ)は、外面(見えるもの)に着目した感じがします。文化のちがいを感じます。

一方、大麻(たいま)だと、

大麻=26+5+6=37 湧き出る光の調和が根源から出る。

成長が早い様子が表されているようです。また、「神の草」と言うのもうなずける気がしませんか?

精麻(せいま)=36+5+6=47 引き離したものに引き寄る振動。

神の依り代、神が宿る繊維と言われますが、それが伝わってくるようです。

オガラ=40-25+31=46 充たした陽の受容が根源から出る。

茎の芯(木質部)そのものを言っているようです。

麻の実=18+28+20+3=69 受容(入れ物)が転がり入る。

まさしく種のことですね。

麻の葉=18+28+20+42=108 指向が飽和して放射する。

そのままを言っているようです。

いかがでしょう。

読み解き方はこれがぜったいではありません。例えば自分の名前の数霊をみてみるのもおもしろいのではないでしょうか?

もう少し挙げると、

神棚=25+3-26+14=16 転がり入る調和。

何が「転がり入り」ます?神棚には。クイズみたいですね。

しめ縄=23+10+14+7=54 陰と陽が転がり入る。

らせん形状ですから左回りと右回りがあります。

磐座=5+7+11+31=54 陰と陽が転がり入る。

しめ縄と同じ数霊、言霊では「伝わる調和が引き寄る場」ですので、天の気と地の気が交流することを言っているようです。

本坪鈴=47+48+44-47+21-21=92 発信放射する振動。

本坪鈴とは神社の鈴緒や祭事祭礼で用いられるもの。鈴だと数霊は21-21=0(外向きの渦と内向きの渦が反転する場を意味)ですが、本坪鈴は文字通り“ただの鈴”ではないようです。

さらには、

正月=23+4+19-25+44=65 広がりが伝わる。

希望に満ちた新しい年のはじめの心を言っているのでしょうか。

旧正月=29+37+19+23+4+19-25+44=150 飽和するそのもの。

飽和するのは暦(カレンダー)です。1年全体のはじめのことを言っているようです。

立春=8+44+23+37+48=160 転がり入るそのもの。

立春の前日、節分ですと126(根源から出て分かれる)なので、さらに進む感じです。陰が陽に変わることを言っているかと思います。

左=1-26+8=-17(統合させられる)

右が-26(分かれさせられる)ですので、日本で「左が聖とされる」のはまとまることが大事だからではないでしょうか。〔左回りが4(陽)、右回りは-5(陰にさせられる)になります〕

数霊ってスゴイ、日本語ってスゴイと感じていただくきっかけになれば幸いです。(^^)/

・参考文献

「古神道入門」小林美元著(評言社)

「カタカムナ 数霊の超叡智」吉野信子著(徳間書店)

「数霊」深田剛史著(たま出版)

今年も1年間ありがとうございました~年末感謝祭2019

年末感謝祭2019

来年のエネルギーが世の中に入ってきて予兆を感じる頃になってきた感があります。

今年も年末感謝祭を1年間の感謝を込めてさせていただきます。

お買い上げいただいたお客様全員に、日本各地をひらいた阿波忌部についてのカラーパンフレットをプレゼント中です(お一人様1部限り、2019年12月31日まで)。

今年は元号が令和となり、ご存じの通り、新天皇即位にともなう大嘗祭(11月14~15日)に大麻の織物、麁服(あらたえ)が阿波忌部の直系である三木家(当主・三木信夫さん)より調進、愛知県豊田市で作られた絹織物「繪服(にぎたえ)」とともに供えられました。

阿波忌部のことがわかりやすくまとめられたA4全10ページのカラーパンフレットです。日本の原点を見つめ未来を創る、そういう時期にふさわしい内容と思います。(個人的にはP8の忌部の精神がおすすめ、これは2013年に今治市であった三木さんの講演の際にも拝聴した覚え)

ぜひ楽しみにお待ちください。(^^)/

京都・山川製。国産大麻(精麻)より紐、より縄に藍染め、草木染めも追加

この度、極上国産精麻のより紐、より縄(大麻紐、大麻縄)の取扱いを開始いたしました。

職人の手仕事による国産精麻のより紐(縄)。
職人の手仕事による極上国産精麻のより紐。写真は太さ5ミリ。

しめ縄や鈴緒など神社仏閣用麻製品を調製する京都・山川の職人の手仕事による麻ヒモ、麻縄を「リーズナブルにできる限り早く」が狙いです。

神事、祭礼用はもちろん、結界、手芸・アクセサリー作りにお役立てくださればと思います。

太さは2ミリから可能で現在、2ミリ、3ミリ、5ミリ、6ミリ、8ミリ、10ミリ、15ミリのご注文をお請けしておりますが、ミリ単位で製作でき、その他の太さも製作可能です(お問合せいただければお見積させていただきます)。ほつれ止めのための端部の処理もやっこ結び、木工用ボンド止めなどお選びいただけます。

きなり太さ2ミリ(上)と3ミリ。端部の処理はやっこ結び。
きなり太さ2ミリ(上)と3ミリ。端部の処理はやっこ結び。

ちなみに、令和の大嘗祭にむけて麻の織物、麁服を織るための麻糸を紡いだ徳島県の三ツ木八幡神社の拝殿の中には紙垂のついた精麻のしめ縄が四方に張られていました。紡女(巫女)が麻糸を紡ぐ「初紡式(はつつむぎしき)」の様子を新聞記事、ニュースなどでご覧になったかもしれません。こちらのしめ縄は6ミリ径です。

麻縄のしめ縄
(用途例)しめ縄。写真は20ミリ径。(麻の垂れ、紙垂もお付けできます)

藍染めもできます。茜染めなど草木染めのより紐、より縄も承ります。現在、可能な染めは紺色(藍染め)、赤色(茜染め)、緑色(藍+ざくろ染め)、黄色(ざくろ染め)、紫色(藍+茜染め)の五色で、すべて先染めの精麻で製作しております。

藍染めのより紐。太さ5ミリ径。
こちらは藍染めのより紐。太さ5ミリ。

麻ヒモ、麻縄の用途例:紙垂をつけてしめ縄。拍子木同士を結ぶ縄、各種祭礼用、添棒縄、結界、手綱や命綱、凧糸に。ペンダント(ネックレス)のヒモ、バッグの取っ手ヒモ、手芸用、オリジナルアクセサリーの製作に。

草木染め二色の麻ヒモも可能に。(写真は藍・ざくろ染め)4ミリ径以下。
草木染め二色のより紐も可能に。(写真は藍・ざくろ染め太さ2ミリ)4ミリ径以下。

 

草木染め三色と五色のより紐も。(5ミリ径以上から)
草木染め三色と五色のより紐も。(5ミリ径以上から)

しめ縄(紙垂をお付けすることも可能)はもちろん、ネックレス、ブレスレット用、オリジナル作品づくり、ジュエリーなどとしてご活用いただいております。

むすぶ・たばねる・つるす・まく・かける・つなぐ・しばる・いろどる、麻縄職人による極上国産精麻を用いた一級の手仕事のより紐、より縄をさまざまな用途にご活用いただければ幸いです。

※伊勢宮忠も同じ職人、極上国産精麻によるより紐を取り扱っています。

精麻についておさらい

精麻(せいま)とは、アサの茎から表皮をはぎ、そこから表皮など余分なカスを取り除いたものをいいます。

黄金色でツヤがあり、新聞の文字が見えるぐらいに薄くひかれたものが上質とされます。(「色・ツヤ・薄さ」と私は覚えています)

なお、ちょっと古いですが福山雅治主演のNHK大河ドラマ「龍馬伝」で岩崎弥太郎宅の納屋に干している黄金色のは精麻と思われます(同ドラマでは栃木県鹿沼市の麻農家、大森由久さんが麻縄づくりを指導)。

今日では、神仏具や縁起物としての利用が多いです。

神道では麻は「神様のしるし」あるいは「神様の宿る神聖な繊維」とされ、神官がつける狩衣なども麻で作られています。また、お祓いの時に使用する幣や鈴緒などにも麻は欠かせません。

縁起物としては、結納で取り交わす友白髪があります。そして、魔をはらうなど呪術力があると考えられていて、ほかにもヘソの緒を縛る糸や死に装束、地域の祭礼など人生の節目や季節の節目に使用されてきました。

 

日本最大の生産地である栃木県で生産されたアサは、生産農家によって精麻、皮麻、苧幹などに加工され、野州麻の名称で全国に流通しています。

かつて、同県では生産地によって引田麻、把麻、岡地束、引束、板束、長束、岡束、永野束などの銘柄があり、結束の方法が異なっていましたが、栃木県では1933(昭和8)年に「麻検査規則」(昭和8年7月11日栃木縣令第46号)を定め、その統一を図りました。

同時に品質の統一を図るため、同年10月より等級検査が実施され、規格の統一が図られました。その結果、精麻は極上、特等、1等、2等、3等、4等、5等、等外の8つに区分されました。

検査は肉眼で行い、品質、長短、強力、色沢、乾燥、調製、結束の各観点より等級を定めました。例えば精麻の極上は「最も光沢に富み、清澄なる黄色か黄金色。手さわり、調製、乾燥すべてに最もすぐれ、繊維が強力なもの」、特等は「光沢に富み、清澄なる黄色か黄金色ないし銀白色。手さわり、調製、乾燥に最もすぐれるもの」などとし、それぞれの基準が設けられました。

野州麻(精麻)の利用 大正時代と現在
大正時代 現在
主な用途 出荷地 主な用途 出荷地
下駄の鼻緒の芯縄 栃木・東京・大阪など 神事・祭礼・縁起物用 全国各地
軍需用(綱・縄) 東京・神奈川など すさ(寸莎、建築用、壁のつなぎ材) 全国各地
綱の原料 東京・神奈川・愛知など 下駄の鼻緒の芯縄 東京・栃木など
魚網 茨城・千葉・神奈川など 綱(凧糸・山車綱等) 静岡・新潟など
衣類・蚊帳地 滋賀・奈良・福井など 衣類 滋賀・奈良など

(主な用途および出荷地の配列は出荷量の多さとは対応していない)

なお、栃木県でニハギ(煮剥)、精麻と呼ばれるものが、麻生産の歴史が古い広島県近辺ではそれぞれ、アラソ(荒苧・粗苧)、コギソと呼ばれます。

麻の茎の皮を剥いで精麻にするまでの工程は、地域によって多少のちがいがあります。

収穫後、麻の茎を折らずに蒸すところもあり、その場合は高さが2~3mにおよぶ桶が使用されました。こうした桶は、青森県立郷土館(青森市)、宮古市北上山地民俗資料館(岩手県宮古市)、朽木郷土資料館(滋賀県高島市)、石川県立白山ろく民俗資料館(石川県白山市)、広島市郷土資料館(広島市)、四国村(高松市)、宮崎県総合博物館(宮崎市)など全国各地の博物館施設で見ることができます。(その多くは麻だけではなく、楮や三椏などを蒸す時にも使用されたそうです)

 

現在、麻の栽培に農薬は使用していませんが、意外と肥料は必要で、特にチッソが多くいるとのことです。

肥料をやれば一時は相当の効果はあるが、長く続けるに於いては漸次逆作用が起こる。即ち作物は土の養分を吸うべき本来の性能が衰え、いつしか肥料を養分としなければならないように変質してしまうのである。(栄光 第七十九号 昭和二十五年十一月二十二日発行)

 

 

参考文献

・「地域資源を活かす 生活工芸双書 大麻あさ」倉井耕一・赤星栄志・篠﨑茂雄・平野哲也・大森芳紀・橋本智著(農山漁村文化協会)

・「日本の建国と阿波忌部」林博章著

・特集 今から始める大麻栽培、「農業経営者」2012年9月号(農業技術通信社)

麻を説かずに麻を説く

さぬきいんべとして麻(ヘンプ)に関わりはじめたちょうど10年前の2009年。

その頃はまだ社会的な機運はなかったと思います。一部の人、限られた人が意識を向けていた状況。

そんな時、こう思いました。直感的に。

「麻を説かずに麻を説く」

これができれば社会に浸透していくだろう。

麻(ヘンプ)ばかりとらわれていると宗教みたいでしょう?当時取り組んでいる人たちをみてそう感じることが多かった。。

三ツ木八幡神社神麻しめ縄奉納(2019年3月31日)オフショット
三ツ木八幡神社神麻しめ縄奉納(2019年3月31日)オフショット

 

10年経ってみてその状況もしだいに、ホントしだいにですけど変わってきたように思います。

まず第一に社会的な流れ、より本質的なもの、ことに人の意識が移っていっているのもあるし、また人から何か言われようと伝えることをコツコツ取り組んできた人たちがいるのもあるでしょうし、海外の動きもある。

販売したり、イベントや講演会に参加したり、関心のある方と話をしたり等、いろいろ取り組んできて、いま思う「麻を説かずに麻を説く」とは、生活に麻(ヘンプ)を何か取り入れること、自然体でそれが自然にある状況を作ることだと思います。

そういう意味で、創業当時にキャッチコピーとしていた「おお麻(ヘンプ)を暮らしの中へ」(この「さぬきいんべ通信」のキャッチコピーにもさせていただいております)は意図とピッタリ合っていたと思います。

例えば母などはどちらかというと興味はない方ですが、テレビで徳島の藍染めのことやってたとか、三木家の麁服(あらたえ)用の麻の種まき式(2019年4月)のことやってたとか教えてもらえました(知らず知らず浸透しているでしょう?)。(^^)

 

「麻を説かずに麻を説く」

これは麻のことに限らずですが、より平和的に進めたい方、あくせくせずに周囲に浸透させたい方にこれをおすすめします。

純国産の大麻と絹の織物が教えてくれたもの

杼と織り途中の布

2012年の夏から2013年の末まで大麻と絹の織物を販売させていただいていました。

糸づくりもその方ご自身がされ、経糸の絹は愛媛県産の晩秋繭「あけぼの」を手びき。

緯糸の大麻は栃木県産の大麻(野州麻)を手績み。

丹念に心を込めて織り上げられていて、清らかで繊細なハリとツヤのある布だったことを思い出します。

高野さんによる手績み大麻糸
手績み大麻糸(緯糸)

この方は多摩美術大学芸術学科映像学部卒業後、23歳のとき、写真を撮るために移住した沖縄県与那国島で機織りの仕事に出会いました。

そこで、島の伝統工芸品に指定されている「与那国花織り」の技法を学び、織り子(※)になったそうです。

その後、愛媛県西予市野村町で国産繭(まゆ)からの「座繰り糸ひき」の技術を習得。

さらに、大麻の歴史に興味をもち、大麻の布を自らの手にとって感じてみたくなり、麻績みの技術を習得されました。

(※)織り子=機織りをする人。沖縄県与那国島の織物の歴史は古く、おおよそ500年。与那国町伝統工芸館では、織り子の養成により与那国織の伝統を継承するための養成活動が行われている。

 

さらにお聞きすると、麻績みは与那国島のお婆さんから習ったそう。

そして、今の「よりひめ(R)」(麻糸産み後継者養成講座)の活動が始まる前に大麻博物館(栃木県)の高安淳一さんからも麻績みを教わったそうですが、それは与那国島で教わったのとは少し違うとのこと。

大麻と絹の織物
大麻と絹の織物(左側は緯糸に藍染め大麻糸がランダムに入ったもの)

日本各地には地域によって育まれた方法、昔から代々受け継がれてきたものがあるのだと思います。

それを後世に受け継げるようにしたいですね!(間に合ううちに)

手間をかけた時間と、作り手の想いが感じられる命のかたまりのような上品で美しい布でした。

産業用大麻の記事(北海道新聞&あさひかわ新聞から)

2014年度から一時、産業用大麻の試験栽培をしていた北海道の状況は今どうなっているかと思い、探っていましたら以下の連載記事を見つけました。2018年7月~8月の記事です。(一部、会員登録すれば無料で読めます。記事の掲載期間は原則1年間、リンクのあるものはまだ読むことができます)

<北見 それでも産業用大麻に懸ける>上 法律の壁 事業化進まず

<北見 それでも産業用大麻に懸ける>中 消えゆく文化に危機感

<北見 それでも産業用大麻に懸ける>下 地域の基幹作物目指す

 

それから、2019年1月と6月のこちらの記事が、あさひかわ新聞にも記事があります。

産業用大麻理解深めて 旭川の有志が協会設立へ

・産業用大麻 産業化の可能性探る 20人が連絡会議

旭川ヘンプ協会 設立総会と記念講演会(あさひかわ新聞)

食品・建材など多用途の原料 産業用大麻・ヘンプの普及目指して 「旭川ヘンプ協会」設立(あさひかわ新聞)

 

また、北海道旭川市で「日本のヘンプ開国」を目指す国際ビジネス会議が開催されました。ヘンプ産業で活躍する海外10カ国以上の講演者から最新情報に触れることができるとのことでした。

日 程:2019年10月11日(金)、12日(土)、13日(日)
場 所:旭川市大雪クリスタルホール・国際会議場
参加費:11日は無料、12~13日は2日間で7万円
主 催:一般社団法人北海道ヘンプ協会(HIHA)
問い合わせ先:https://asa-con.jp