「まけるが勝ち」は本当か?

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令和元年初日です。

新元号の「令和」が発表される10日くらい前のこと。私は中西進さんの著書「日本人の忘れもの」を手に取っていました。

以前、伯家神道・十種神宝御法の修行座で聴聞の際、中西さんのこの著書が紹介されていて名前と本のタイトルをメモしていたのですが、3年前ほど前、そのメモを再び見て、ちょっと読んでみようとはじめてこの本を手にしたんです。

パラパラッとページをめくっていくと本の最初の方に「まけるが勝ち」とあります。その時そうかもしれないとハッとし、ちょうど競争とも言える状況(争う気は一切なかったのに)に巻き込まれそうになっていた時だったので素直に負けてみることにしました。割とあっさりです。

その時はわかりませんでしたが、その選択が正しかったことが時を経るほどにわかってきた感じがしています。第一他者と争おうとしない、争わないのでカッカッすることはありません(しかし切磋琢磨していくことは変わらないです)。

 

ビジネスやスポーツなどでは勝つこと、1番になることが一般に重要視されます。

例えば、バドミントン。ラケットを使ってシャトルを打ち、競技においては相手コート内のシャトルが打ち返せないところに打つのがいいとされます。あるいは相手のミスを喜ぶこともあって、ストレート勝ちする。逆転勝ちする。それがたたえられますよね。

日本には羽根つきという遊びがあるのをご存じですか?お正月に羽子板で羽根をつき合う遊びです。いまは見かけることは少なくなっています。

羽根つきの道具
羽根つきの道具、羽子板と羽根

こちらはバドミントンと違い、「いかに2人で長くつけるか」で競争ではありません。協力するという感じ。また、バドミントンはコートの広さなどお互いの条件が平等であるに対し、羽根つきはコートなどないです。

 

羽根つきの例を挙げるまでもなく、2人でせんべいの両端を持って割ると多く取ろうと思った力が強い方が小さくなること、3.11の震災以降でしょうか年々、スポーツで以前主流だった“根性論”が薄れてきていたり、競合関係にあった会社同士が資本・業務提携するケースが多くなったりしている例が増えています。

これらはまけるが勝ちの例と思います。

「日本人の忘れもの」の中には、まけるが勝ちの他、人間を尊重する心ゆたかな社会をつくってゆくために私たちが心がけるべきことは何かが書かれています。

「令和」の元号が発表されて数日後、考案者が中西進さんではないかと報道がありました。そんなこと何も知らず「日本人の忘れもの」を手にしたのは何かあると感じます(まったく関係ないはずの他のところでも中西さんの名を拝見していたのです)。

中西さんはご存じの通り元号「令和」の典拠とした万葉集の研究で第一人者。

令和の意味は英語ではBeautiful Harmony(=美しい調和)だとのこと、令和の時代が上のような日本の文化が大切にされる世になっていくといいと思います。