徳島・大麻比古神社 正式参拝の巻
日本の麻文化の発祥地である阿波国の一宮☆
忌部氏の祖、天太玉命を祀る徳島・大麻比古神社に正式参拝
2月4日、徳島県鳴門市の大麻山(おおあさやま・標高538m)の麓に鎮まる大麻比古神社(おおあさひこじんじゃ)に正式参拝させていただきました。
2017年秋に予定されている同神社への日本麻振興会(栃木県・大森由久理事長)による国産精麻のしめ縄奉納のための打合せと精麻のご祈祷を兼ねた機会に、ご一緒させていただいた次第。
この神社は、約30万人が初詣に訪れるという阿波国(現在の徳島県)の一宮です。社伝によると、神武天皇の御代に阿波国を開拓した天太玉命(大麻比古大神)の孫である天富命(あめのとみのみこと)が忌部氏の祖神・天太玉命をこの地にお祀りしました。それが神社のはじまりだそう。
天富命は阿波忌部一族を率いて阿波国に移り住み、麻や楮(こうぞ)を育て麻布・木綿をつくって開拓されました。徳島県内に阿波忌部氏(祖神・天日鷲命)にまつわる神社、史跡が今もたくさん残っています。〔阿波藍の起源も阿波忌部氏が織った麻織物・麁服(あらたえ)とされている他、お隣の香川県(讃岐国)にも阿波忌部氏が進出し足跡を残しています〕
祓川橋の南側より大麻山方面を望む。大麻山は古くから船舶航行の目印とされた。 |
2016年より同振興会は国産精麻を使ったしめ縄、鈴緒を奉納し始めましたが、旧麻植(おえ)郡など麻に由来する地名や史跡が日本国内で格段に多い徳島県内の神社が奉納先となるのは神山町の上一宮大粟神社に続いて大麻比古神社が2例目となる予定。
上一宮大粟神社へのしめ奉納の後、同県木屋平の三木信夫さん〔天皇即位の大嘗祭(だいじょうさい)に使われる麁服を代々献上してきた三木家第28代当主・阿波忌部氏の直系〕が圓藤恭久宮司にしめ奉納のご相談をされ、快諾を経て今回の奉納の話へとつながったとのこと。
朱色の大鳥居を抜け、前方に大麻山をあおぎながらおよそ800mの参道を進み朱色の祓川橋を渡ると、うっそうとした樹林に覆われた神域です。同神社に来るのは2年ぶり5回目ぐらい。いつ訪れても印象的な社殿正面に生い茂る大楠とご対面し、集合場所の社務所前へ。
同振興会「全国の神社仏閣に神麻のしめ縄・鈴の緒を奉納する有志の会」の幹事を務める安間(あんま)信裕さんとはこの日が初対面。ご挨拶させていただいた後、拝殿横の参拝者控え室へ移動します。
鴨島町「牛島」〔麻師(おし)の島〕、麻宮(おみや・牛島八幡神社)、麻塚(おづか)神社(牛島)、小原(おはら・麻原)、市瀬(いちぜ・麻の市の伝承)、麻植塚(おえづか)、向麻山(こうのやま)、麻搗石(おつきいし)・麻晒石(おざらしいし)、麻漬(おけ)・麻漬の口〔飯尾(いのお)川〕、御所神社の祭神「大麻綜杵命(おおへつきのみこと)」、麻植の神塚、麻植神社、麻植市、西麻植、山川町では麻生家、岩戸神社の麻晒(おざらし)池・麻笥岩(おごけ)、山崎忌部神社(麻植神を祀る天日鷲社)、種穂山・苧延(おのべ・麻延)、麻窪(あさくぼ)、麻漕石(おこきいし)、麻懸谷(おがけたに)、麻掛(おがけ)、麻畑、麻平、麻廣、麻扱石、麻桶石、神谷(鳴谷)、美郷の種野山・種野盆地、木屋平の三木家、麻衣、麻畠など |
『日本の建国と阿波忌部』林博章著P.94より引用、旧麻植郡の東部より列記。
樹齢約1000年と伝えられる大楠のご神木。(鳴門市指定の天然記念物) |
目的のために集まったのは徳島県内外から20人弱。案内にしたがって手水で手と口を清めた後、昇殿。太鼓が鳴って正式参拝がはじまります。玉串奉奠は座礼で、過去に出雲大社、物部神社に正式参拝させていただいたり、ときどき神社の神事に参列したりしますが座礼のところははじめてみました。
正式参拝の後、圓藤恭久宮司がしめ縄奉納についてお礼を述べられ、参拝者控え室にて神社の由緒をまじえてご挨拶くださいました。
それを聞きながら今回の奉納はあらためて特別なことなんだなぁと感じました。ご祭神について天太玉命(大麻比古大神)は天つ神ですが対立関係にある国つ神である猿田彦大神が合わせてお祀りされているところは珍しいと圓藤宮司。
もともとは猿田彦大神は古くより大麻山に鎮まる神でしたが後世に合祀されたそうです。
祝詞殿、内拝殿、外拝殿は1970(昭和45)年の造営。 |
神麻と呼ばれる精麻は、“重い”と感じた。 |
それから、しめ縄の奉納予定箇所の採寸などをおこなった後、さらに参集殿に移動し圓藤宮司ら神職の方と残った人で3,40分ほど懇談。軽く自己紹介したり、徳島の話題や麻の話に触れたり、貴重な時間を過ごさせていただきました。
大麻比古神社を創祀したとされる天富命は、神武天皇建都の際、橿原の宮殿を造った神です。その後、阿波国に移り住み、次に黒潮に乗って東国(現在の千葉県)に渡り麻を植え殖産をおこしました。その技術は茨城、栃木にも広まり、現在の織物産業や和紙づくりの礎を築いたといえるのではないかと思います。
この日は立春。祝うかのような青空が見られ、初対面の方、再会の方含めなみなみならぬご縁を感じました。帰り、安間さんが振興会理事長であり栃木・鹿沼市の麻農家である大森由久さんが作った神麻(しんま)と呼ばれる最高品質の精麻の束を持たせてくださいました。
圓藤宮司はじめ神職の方、安間さん以下ご神縁の皆さま、この度はお世話になりました。
奉納日は11月1日の秋の例祭に合わせ、2017年10月28日(土)の予定です。奉納の日が楽しみです。
(文責・加藤義行)
大麻比古神社
〒779-0230 徳島県鳴門市大麻町板東字広塚13
TEL:088-689-1212 http://www.ooasahikojinja.jp/
参考文献:
「日本の建国と阿波忌部~麻植郡の足跡と共に~」林博章著
「週間 日本の神社No.67忌部神社・大麻比古神社」(デアゴスティーニ・ジャパン)
日本麻振興会「全国の神社仏閣に神麻のしめ縄・鈴の緒を奉納する有志の会」webサイト